書籍・雑誌

2017年5月23日 (火)

明治開化 安吾捕物帖と不連続殺人事件

 と、云う訳で日記系…?
 先日、やっとKindleにインストールしていた上記作品を全て読破出来た
 両方とも坂口安吾作の小説で、安吾捕物帖はシリーズで短編20本、不連続~は長編作品である

 さてさて、坂口安吾及び安吾捕物帖と云う作品は以前にも数回記載したと思うが、2011年10月期にノイタミナ枠で放映されたアニメ『UN-GO』の原案と云う事で興味を持っており、先日バッタもんで佐々木氏が読破後に無料配付していた文庫群に混じっていたので1冊戴き、結局途中からはKindleに青空文庫として上がっていた全作品をダウンロードして読んだモノである
 まぁ併せて作者である坂口安吾にも興味を持って、氏の推理小説としては初めての作品である不連続~も読んだ、と云う訳である
 坂口安吾は1955年2月に没しており、著作権で保護される『死後50年』を経過している為、合法的に青空文庫に上がっているのだ

 先ずは作者である坂口安吾と云う人物だが、1906~1955(享年48)と云うから、明治中期~昭和中期の人であり、処女作発表が1931年と云うから、まぁ戦前~戦後少々までの活躍次期だったのだろう
 1947年に初の推理小説である不連続~を雑誌に掲載開始、その時には既に人気作家になっていた(作家としてブームになったのは1921年発表の『白痴』)そうなので、特に推理小説家として有名な人、と云う訳では無い
(ちなみに安吾捕物帖は1950年に書き始められ、最終作である20話目は1952年の発表である)

 ちなみに横溝正史は1902-1981(享年79)、処女作『恐ろしき四月馬鹿』が1921年、初の金田一シリーズである本陣殺人事件が1948年、絶筆である悪霊島が1980年となる

 …対比すると横溝氏の方が年上だったんだな…ただ、横溝氏は地方出身で実家の薬局を継ぐ為に薬剤師の資格を得て薬局を数年経営していた時期が有り、そこでは小説家稼業に従事していないので、ブームが遅れている訳だ
 処女作の発表年で云えば、横溝氏の方が早いのだが、コレは雑誌投稿作品で、コレを読んだ江戸川乱歩氏に才能を見出されて、半ば強制的に作家として活動する事になった訳で…
 書かれた年代としては不連続~と本陣~がほぼ同時期であったと云うのは、この記事の為に調べた時に初めて知った

 で、作品の方に話は移るが、先ずは安吾捕物帖
 短編でしかもシリーズ最初に序文として『極めてパターン化しており、全5章(作品により多少の変動有り)として、虎之介が海舟を訪ねて事件説明を始めるまで→事件そのものの説明→海舟が推理する→新十郎が真相を暴く→海舟が負け惜しみを云う』と云った旨の説明がある訳だが、まぁ確かにそう云う感じである
 ただ、後半に行くに従って、段々その辺が有耶無耶になっているのだがwww
(海舟のミスリードされた推理を一々考えるのが億劫になったんぢゃないかなぁ…とか邪推するのだがwww)

 UN-GOは…まぁ原作では無く原案、と云えばそうなのだが、結局、第1話位しか原案の事件を踏襲した作品は無いんぢゃね? と云う感じであったのだが…まぁ細かく対比をしている人のページも有る様なので、その辺を調べたい人はソッチを当たって欲しい

 で、読み始めた第一印象が、先ず『読み辛い』であったwww
 兎に角読み辛いのだ…直接面識の有る人のは愚痴った事は有ると思うが、ナンと云うか『講談師が人前で物語を講釈するのに使う台本をその侭冊子にした』感じなのである
 「○○が××を△△したもンだから、たまンない」の様な、文語調・口語調とはまた別の…ナンか云い方は有るのだろうが、私は知らない…な文体で書かれている

 上記の通り明治中期生まれで戦前から小説を書いていた人だから…と云うのは横溝氏も同じなのだが、単語が現代人には馴染みの無い物もフンダンに入っており、横溝氏の小説を数作読んだ後だから挫折せずに読み切れたが、文体の読み辛さが更にソレを増幅させ、最初にコレだったら途中で投げ出していたのではないか、と思える位である

 内容としては基本的にHow done it的な作品であり、容疑者の動機を探る様な事が無い
 複数の容疑者には動機が有り、この状況で起こり得る殺人はどうしたら出来るかを突き詰めると真犯人に辿り着く…と云ったモノである
 wiki情報では、氏は和製ホームズを書きたかったから、このシリーズを始めたと云う旨の記載も有り…まぁホームズも数編の長編以外は新聞の読み物連載だった所為も有り非常に短編で、人間関係を深く洞察する作風は無く、トリックを暴くのが基本になっているし、コレを目指しているなら、そう云う作品になるのだろうな、とも思う

 上記に有る通り、名探偵と誉れ高い新十郎に対抗したい虎之介が、維新の傑物である勝海舟に事件のあらましを告げて知恵を借り、解いたと思った所に見落としが有り、ソコを的確に見抜いていた新十郎が真相を暴く…と云うパターンが成り立っている
 で、真相を知った海舟が『事件の詳細を事細かに告げないから』だとか『現場に居合わせないと気付かない盲点を突かれた』とか、まぁ自分は『与えられた情報の中で最良の推理をしている』と云うスタンスを崩さずに相談に来た虎之介を最後にディスっているのだが、当の虎之介は海舟に心酔しているので恐れ入るばかり…と云う辺りでオチが付く感じである

 途中から、上記の通りミスリードで辿り着く『偽りの真相』を考えるのが面倒になったのか、海舟の出番が非常に減って来ているのだが
 ソレにしても、勝海舟と云えば、維新の傑物で日本史(近代史)には必ず名が載る人物なのだが、そんな人物を此処まで扱き下ろして良かったのか、と云う感想も出る
 調べると、海舟の没年は1899年、坂口は上記の通り生年が1906年なので、生きた時間は全く被っておらず、人物像は伝聞でしかない筈なのだが…

 併せて、最初には警察内部に古田巡査と云う老警官が登場し、新十郎の手足となって証拠集め等を手伝う記載も有るのだが、ソレも途中で御役御免と云うか…何時の間にか出て来なくなり、証拠その他は新十郎が自身で出歩いて集める事が殆どになる
 この時代の作家はシリーズを書くに当たって詳細な設定等記しておかないのが常なんだろぉなぁ…と思えてしまう
(事実、今度気が向いたら書こうと思うのだが、横溝氏の金田一シリーズでも準レギュラーの設定ミスを見付けている)

 この当時の作家と云うのは純文学を追及する学者で無い限り、人気商売であり、読まれる作家が人気作家だった…と云う事は、現在のラノベ作家とスタンスは指して変わらない筈なのだが、読者もその辺を全く気にせずに読んでるだけなのか、最近のヲタが細かい所に気付くだけなのか…ラノベ作家の方が人間関係だの物理的な位置関係だの、詳細な設定を考えてから書き始める人が多い気がする

 さてさて、次に不連続~なのだが、文体は逆に安吾捕物帖に比べればまだ読み易い
 ただ、登場人物が非常に多い
 密室では無いが、酷い田舎の大邸宅…周囲には1里以上離れた場所に人里が有る程度で『犯行の為に外部から進入して、犯行後にまた外部に逃げる』は不可能では無いが、ソレを連続で行うには効率が悪過ぎる…と云う事で犯人は大まか絞られてくる…と云った状況
 そんな邸宅に主人・客・使用人等併せて28人の人間が集められ、立て続けに発生した殺人事件により、8人が被害者となる
 普通に考えれば連続殺人事件なのだが、殺された被害者に一貫性が無く、一連の事件として考えると動機がハッキリしない…別々の犯人が其々別の思惑で事件を起こしているかも知れない、と云う可能性も含めて『立て続けの事件だが、不連続』と云う意味でタイトルが付いた、と作中にもそれとなく書かれている
 まぁ実際の所、それでは推理のし様も無く、同一犯に因る連続殺人事件だった訳だが…

 上記の通り、登場人物が非常に多く、しかも其々に『誰が誰を呼ぶ時にはこの呼び方』の様に『この発言でこう呼ばれているのは誰だっけ?』的な思い出しをしないと話も頭に入り辛い作風である
 更に人間関係も酷く複雑で、現在Aの妻だが、元はBの妾で更にCとも関係有り…の様な入り乱れが激しく、そう云う意味では誰が死んでも叩けば動機の一つ二つ持ってる奴は複数出る…と云う様な、やはり『容疑者多数で、この殺害が可能な人間は…? と云うHow done it的な作品である』と云える

 初出では章区切りで雑誌掲載をしており、懸賞金を出して読者への挑戦状と云う形で『此処までで犯人が判った人は居るかな』的な文章が末尾に付く章が幾つか散見される
 しかも、エラリー・クイーンの様にスパッと書かずに、自分の知り合いの作家名を出して『コイツは良い所まで読んでるがマダマダだ』とか『コイツの発想は当てにならん位、明後日の方向に行っている』とか、作中の人物でない『作者の言』で書かれる文章が有るのは、珍しいと云えばそうだが、読んでて少々鬱陶しい感じも有る
 結果、見事に犯人・動機・トリック等を解き明かしたのが4人出たらしく、その内本当に寸分違わずの1名を大賞とし、残り3名を2位扱い、後はトリック等は外している部分が有るが犯人は当たってる人が4人の計8人に懸賞金を送った、と云う扱いで締め括っている

 まぁ最後に探偵役の登場人物が全ての謎を解き、殺害に関するトリック及び動機の説明等、全部済ませた時に矛盾は無く、他の解も得られない程度には完成していたので、推理小説として成り立ってはいるのだが…横溝小説の方が読み易いなwww

 坂口安吾は他にも20少々の推理小説を書いていたそうだが、申し訳無いが、これ以上読む気にはなれない…現在は横溝正史の『夜歩く』に本を移している
 女王蜂も見れる映像作品は出来るだけ集めたし、原作も読んだので纏められると云えばそうなんだが…間が空いた所為で改めて読み直した方が良いかな、とも云える状況(同じく『本陣~』も)なのがナンともwww
 未だに私のブログで検索件数で引っかかるのが横溝作品(八つ墓村とか病院坂とか)なので、もしかすると期待されてる? 或いは期待はされてないけど、そう云うの書けばまた見られる? とは思うのだが…あれ、書くの凄ェ根気と労力が要るんだよねぇwww
 まぁ気が向いたら、と云う事で

 さて、次は…ナニも書く事が無い
 故に、また何か探しながら…と云う事で
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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2016年8月16日 (火)

悪魔の手毬唄(ネタバレ多数:原作・映像4種・漫画)その2

 先週の続きになるが、事件の真相が此処からネタバレになるので、ソレが構わない人だけ読み進めて欲しい



 さて、此処からは更にネタバレが強く、犯人等の事件の核心を比較したい
 先ず犯人…の前に、恩田事件の話に戻る
 実は恩田幾三=青池源治郎であり、当然、恩田を殺害した犯人は別に存在する
 源治郎は亀の湯を継ぐ前、映画『モロッコ』の大ヒットで活弁が不要になった時点でモール製作の副業を故郷の村に斡旋して利ザヤを稼ぐ予定だった(コレが昭和6年)
 更に村の有力者である由良・仁礼2家の嫁・娘に手を出し孕ませている(コレで出来た娘が泰子・文子である)
 また、恩田として村に逗留している際に世話をしてくれていた別所の娘にも手を出しており、孕ませた(コレで出来た娘が千恵子)
 事件の後に由良・仁礼の2家は家の力等も使い、別の親を設定する等して『子が恩田の娘である事』を隠していたが、別所の子だけはソレだけの力も無く、別所千恵子は詐欺師・殺人者の娘と村で迫害されていた過去がある
 また、上記恩田=源治郎の関係上、亀の湯の歌名雄・里子も全て父の同じ異母兄妹と云う関係が成り立つ
 兎に角、副業斡旋を続けていた恩田=源治郎だが、モール元受の倒産で結局利ザヤが得られない事が判り、取り敢えず集まった機械の代金だけ持って別所千恵子の母と逃亡する計画を立てる
(由良・仁礼での乱行は自分を優遇しなかった村に対する意趣返しの意味が強かったが、特に村の有力者でもない別所の娘には確かに愛情を持っていた、と推理された)
 ソコに犯人がやって来て恩田を殺害、判別が付かなくなる様に囲炉裏で顔を焼くと云う隠蔽を図った
(隠蔽には放庵の助言が有った可能性がある)
 この辺の粗筋はどの映像作品でも共通しており、若干の細部に違いは有っても事件の本筋に影響の有る程違いは描かれていない

 さて、恩田=源治郎について、金田一はやはり推理でソコに行き着く
 原作では、周囲の証人から恩田又は源治郎の人となりを調査するに当たり、段々イメージが重なってきたとしている
 石坂版では偶々鏡に蜜柑が1つ映り込み、1つの実体が2つに見える事から閃いた…としているが、尺の関係なのか、説明が雑である…私は何度もこの映画を繰り返し見ているが、この説明については此処の会話だけでは全く理解出来ず、金田一の意気込みばかりが空回りして見えるのだwww
(『謎を解く鍵は蜜柑だったんです』『蜜柑?』『えぇ、詰まり、一人二役』…コレで会話が成立する訳が無いwww)
 古谷版では唄の三羽目を調べに神戸に行ってる最中に里子の殺害を知らされ、ソコから里子も恩田の娘なのでは…と、発展して推理した様だ
 古谷2時間版では、実は恩田=源治郎の確信を持つ根拠が全く描写されずに、イキナリ結論に行き着いているwww
 一番尺が厳しいのがこの作品なのだが、結構酷いwww
 稲垣版でも原作と同じく、調査過程で証人の証言からイメージが重なった旨の説明がある
 JET版でも推理の根拠が明確には記されておらず、源治郎の写真(後述)探しを始めている

 ただ、コレは飽くまでも金田一の心象でしかない
 証拠として2つ提示されるのだが、1つが肉体的特長である『両足の中指が長く、靴下・足袋等はソコから破ける』と云う証言、もう1つが両者の写真照合(所謂首実検)である
 先ず、両足の中指が他人より長い…と云う身体的特徴については、原作では恩田事件当初に気付かれている
 ただし、まだ亀の湯に居た源次郎の親類や妻の『リカ』がその特徴を含めて源治郎の遺体である旨証言しているのだ
 本題の連続殺人の際、別所千恵子の母からも、恩田の身体的特徴として証言があり、磯川の中で『死体は恩田』を確定させる
 ただ、金田一は上記青池の親類筋の証言を忘れておらず『恩田=源治郎』の疑念が強くなる原因にもなった
 また、被害者の足(指の長さについて特徴を確認出来る)現場写真等の資料は岡山県警が空襲で焼けてしまっており、当時検死を担当した村医が趣味で撮っていた写真から確認している
 石坂版では恩田事件当時の証言が無く、中指の写真(村医が所蔵)で恩田事件の被害者が恩田である事が確定するも=源治郎には至らない
 古谷版では源治郎の遺体は当時親類筋及びリカの証言で確定するが、中指の言及は無い
 昭和27年になり、別所母の証言から中指の話になり、死体が恩田である事が判明するが、コレが原作準拠の話に繋がり、恩田=源治郎の疑念が強くなる
 古谷2時間版では石坂版と同じく別所母の証言→村医の写真→恩田の死体確定、しかし=源次郎に至らず、である
 稲垣版では少々可笑しいのだが、恩田事件当時に親類筋から源次郎の遺体である旨の証言は有る
 昭和27年になり、別所母から中指証言が有り、村医の写真で遺体が恩田である事を確定するのだが、恩田事件当時の親類筋の証言が全員の頭からすっぽり抜けて『源治郎が犯人』説のみ有効になる

 その後、金田一は神戸に出て源治郎の写真を求める(閉鎖された寒村では、活弁と云う『芸能界にいる人間』を下に見る風習があり、過去を消す為に青池家では過去の写真は全て処分していた…恩田は写真嫌いで通しており、写真が入手出来なかった…と云う経緯で、事件当時に写真照合が出来なかった、とされている)のだが、原作では活弁としての写真を新聞社から入手する
 コレを恩田と関係した3人の女性に確認して貰う訳だが、由良の嫁である敦子のみ、当時は夫が存命中であった中での不義である事が明るみに出、照会に出て来ない状況であった
 石坂版ではその辺の事はうっちゃってwww照会に参じ、仁礼・別所の母と一緒に写真照会をしている
 古谷版では別所母のみ写真照会を受け、由良敦子は照会を拒否する…しかし、金田一が強引に聞き出し、証言を得る
 古谷2時間版では3人揃った所に等々力が写真を持って登場する
 稲垣版では石坂版と同じく3人揃っての写真照合となる
 JET版でも照合の現場には3人揃っての照合である
 原作では更に過去、由良家が恩田事件で更に没落した際、当時当主の卯太郎が病死し、後家になった敦子と仁礼嘉平が密接になった時期を記している
 その時に、嘉平は放庵から『敦子は卯太郎存命時期に恩田と通じていた』と云う事を教えられ、敦子との関係を絶った…と云う経緯だったが、この話が無くとも狭い村で不義密通の過去が公になったのに写真照合に出て来れる『原作と古谷版以外の全作品』での敦子は少々道徳観念が可笑しいのかも知れない
 上記、嘉平と敦子のエピソードは原作以外に語られていない事も有り、古谷2時間版では文子殺害時には御互いの娘の殺人犯人を御互いだと断定して取っ組み合いに近い喧嘩をするシーンも有った
(他の作品では、原作も含めて文子の兄である勝平と泰子の恋人であった歌名雄が取っ組み合いになっている)

 では、犯人だが…原作・全映像作品・漫画(コレには以前書いたつのだじろう版も含めて)全作品において青池リカで共通している
 当然、恩田事件での犯人もリカである
 動機も基本的に全て共通である
 恩田事件については亭主の浮気(しかも同時に三又…里子の妊娠中と云う意味も含めて4人同時期に相手にしていた訳だ)と、恩田としての詐欺について、更にはモール副業で儲ける事が出来なくなった事でコレに見切りを付けて別所の娘(千恵子の母)と上海に逃げる計画を知ったから…と云うものである
 上記で推理されたとおり、源治郎は別所の娘にだけは愛情を持っていたのである
 で、連続殺人についての動機は、上記の通り泰子・文子・千恵子・里子、そして歌名雄は全て父の同じ兄妹である事が起因している
 歌名雄と泰子が恋仲になり、ソコに仁礼が文子の婿に…と横槍を入れる、ソレら全てが血の繋がった兄妹の間で起きている事であるが、ソレを知るのは恩田事件の真相を知るリカと放庵だけである
 この事を公にすれば恩田事件の犯人も自ずと判ってしまう事もあり、誰にも打ち明けられずに犯行に走った、とされる
 また、JET版でのみ、前回にも書いたが泰子が高慢な性格に設定を変えられて(よくソンな性格の娘と恋仲になったな、歌名雄…)おり、1人赤痣で顔体半分が覆われている里子を蔑む姿がリカの目に入り、殺害動機の一つとなった

 原作では、千恵子殺害の積りが誤って我が子である里子を殺害してしまい、本懐である千恵子を改めて殺そうと、千恵子が故郷に錦を飾る為に建設した、通称『ゆかり御殿』に放火し、ドサクサで犯行を決行、しかし警備している金田一・警察陣に阻まれ逃走中に土手を越えて沼に落ち、溺死している
(コレは読む限り本懐を遂げられずの自殺だったのか、逃走中の事故だったのか、判別がし辛い)
 石坂版では里子を誤って殺した事に気付くと、亀の湯・里子の住んでいた土蔵に千恵子を呼び出し、自白する展開になる
 別の場所で謎解きをしていた金田一と磯川が土蔵にやって来て、更に自白を続けるが、金田一らが放庵の死体確認の為に少し席を外した隙に警察の目を盗んで逃走、沼に身を投げる展開になる
 古谷版では里子の死体が未発見の時点で千恵子を呼び出し犯行に及ぶが、金田一に阻止され、沼に入水する
 古谷2時間版では石坂版に近いが、千恵子に告白後、金田一・磯川が土蔵に来るが特に抵抗も無く隙を突いて沼に身を投げる…ただし、此処で金田一が入水を食い止めている
 しかし、放庵を殺した『お庄屋殺し』の毒草を使い服毒死と云う結果で、やはり命を落としている
 稲垣版では映像化作品で唯一描写されている『ゆかり御殿』とその放火が有り、そのドサクサで千恵子殺害に及ぶが金田一に阻止され、放庵の家に逃走する
 ソコで追い詰めた金田一にまで刃を向け、橘・歌名雄までやって来てやっと罪を自白、源治郎の幻(幽霊? 稲垣版の金田一シリーズは結構幽霊描写が多いのが特徴である)を見て、ソレを追う形で沼に入水する
 JET版では里子の遺体発見後に千恵子を土蔵に呼び出し犯行に及ぶも歌名雄に阻止され、逃走、沼に入水する
 基本沼で死んでいるが、古谷2時間版のみ阻止されたが服毒していたと云う形で二重の自殺を企てていた事が特筆すべき所か
 また、映像作品・漫画版では千恵子を呼び出すのは、ほぼ全作共通だが、自白する積りだけの場合と千恵子の殺害を完遂しようとする場合とに分かれるのも比べて見ると面白い
(更に云えば、金田一にまで凶行に及んだのは稲垣版だけである)

 さて、母親が一連の殺人犯として自殺、妹もその被害者として死亡、父親は実は昭和7年に死んだ詐欺師である事が判明し、更に云い寄ってくれた女性達は皆被害者として死んでいる…と云う正に踏んだり蹴ったりの歌名雄だが、原作では『歌が上手い』と云う設定を持っており、一人上京する道を選ぶ
(千恵子のマネージャーが芸能人として育てる思惑も若干有る様だ)
 コレに伴い、亀の湯は別の親戚筋に譲る事が語られている
 石坂版では磯川が引き取り、岡山の農場専門学校に進学させることにした、と金田一に告げている
 亀の湯の今後は全く描かれていない
 古谷版では事件が完全に決着した後、金田一・磯川から真相を聞き、日和に引き取られる事になる
 亀の湯は特に語られないが、常勤の女中さんも郷に帰る旨云っているシーンが有り、歌名雄もどこか工場で働くと説明が有り、継ぐ気は無い様である
 古谷2時間版ではリカの49日後に1人で東京に出る、と金田一・千恵子に語る…やはり亀の湯の今後は語られていない
 稲垣版では千恵子のマネージャーは出てこないが、千恵子の母が育てると東京に引き取られる
 JET版では岡山の農大に進学するが、磯川他誰かが引き取ると云う描写は無い
 原作では1人或いは東京で千恵子のマネージャーに付いて芸能人生活…となる可能性が示唆されるが、石坂版の『磯川が預かる』と云う結末が印象的だったのか、古谷版・稲垣版と磯川ではないモノの、その位置に居る警察(警部等)が個人的に引き取る結末はソレナリに多い
 古谷一行主演の連ドラ版横溝正史シリーズではこの作品が最後の作品(翌年、第2シリーズが製作されるが)で、日和とのコンビが此処で一段落付く為、こう云う展開も可能と判断されたのだと思われる
 稲垣版でも結局シリーズ最終作となった作品で、以降は稲垣金田一と橘が組んで事件に当たる作品は作られていない

 最後の項目に入る前に特筆すべき事を各作品毎に少々記す
 石坂版では『おりん』が『おはん』に名を変えている…当時、同じ東宝系の映画で『おりん』と云う主役が活躍する映画が配給された事に考慮した事らしい
 また、放庵は恩田事件の直後、放心状態のリカを手篭めにし、以降も生活費を強請っている解釈がされている
(原作では、放庵は色好みで少々独特の倫理観が有る描写だが、特に強請りや強姦等はする性格ではない、とされている)
 また、原作では『グラマー歌手』として有名になった『大空ゆかり』について、特に歌手とは云っておらず、更に芸名も使わずに『別所千恵』で有名になっている
(原作では別所千恵子…何故『子』を抜いたかは不明)
 古谷版では捜査主任が済し崩しに日和となっており、原作に登場する立花警部補は登場しない
 古谷2時間版では石坂版に準拠して恩田事件直後、放心のリカを放庵が手篭めにし、その後も生活費を強請っている描写がある
 また、ゆかりはグラマー歌手であり、帰郷の際に里子に対して最新レコードを土産にしている(他の泰子・文子には特に渡していない事で、村に居た時期に一番親しかったのが里子だった事が暗示されている)
 稲垣版ではリカは放庵に手篭めにはされていないが、恩田事件をネタに生活費を強請られている描写はあった
 また、パートナーの警察が署長と云う立場であり、捜査主任を兼ねる展開になっている(ってか、何処署の署長だったのか…シリーズ5作で常に一緒なんだがwww)
 JET版では泰子の生前最後の目撃者は千恵子となっている
(原作その他全てで、その位置には里子が入っている)

 最後になるが、金田一と磯川が別れるシーンである
 事件が全て解決し、金田一も磯川も全て事件から解放される(原作では捜査主任は放庵の捜索時から村に来た立花であり、磯川は御意見番的な位置に居たので、開放が早かった)と、傷心旅行に出るのだ
 磯川がリカを愛していた(勿論片恋な訳だが)事を見抜いていた金田一の計らいなのだが、大阪で二人は別れる事になる
 その際、金田一は磯川に『リカを愛していたんですね』と告げられ、吃驚した隙に列車が出発、返答を得ないまま別れる所で小説が終る
 石坂版では総社駅(岡山の街)で別れる事になるが、磯川は事件の後処理を手伝う事になっているらしい
 そこで同じく『リカを愛していた』事を見抜かれるが、列車の駆動音でソレが磯川の耳に入ったかどうかも不明であり、やはり回答を得ずに列車が出る…ただ、上記の通り別れたのが総社駅、駅のプレートには『そうじゃ』が平仮名で書かれているのが画面ほぼ中央に大きく映し出される
 磯川の答えを画面に表示する暗示的なラストである
 古谷版ではリカの墓前で別れており、その場で『リカが好きだった』事を見抜かれるが、日和は無言の肯定に近い形で返答している
 古谷2時間版でもリカの墓前で別れるが、この作品だけ『リカを愛していた』旨の台詞が全く無い…と、云うのも里子の遺体発見後、解決前に磯川自身がリカに告白めいた事をしているのだ…当然、成功してはいないのだが
 稲垣版では村境で橘と別れ、人力車で村を出るのだが、その際に耳元でハッキリと『リカを愛していた』旨の見抜きを告げられている…橘が驚いている隙に人力車を出させて回答は聞いていないが
 JET版では石坂版に準拠しており、総社駅で別れ、『リカを愛していた』の問答は列車駆動音で磯川に届いていない風な描写であった
 原作でも印象的なラストシーンな訳だが、石坂版の『そうじゃ』と云う駅名(実際にある地名だし、原作でも確か乗り換えの要所になる大きな駅として登場する)を旨く使った映像美であるラストを作って仕舞ったので、他の作品にも少なからず影響を与えていると思う
 また、上記歌名雄の一件でも書いた通り、古谷版(連ドラ)と稲垣版では日和・橘と組む最後の事件なので、こう云う位置設定が可能だったのだと思われる

 以上、各作品を見ながらメモってただけで8.5KB近いメモになっていたので、ある意味覚悟していたが、文章にしたら30KB超えてるとか、どぉよwww
 取り敢えず2回に分けたが、読んでくれる人が居れば有り難い話である

 さて、次回は…何書くかな
 ミケのレポートも書けてないし、その辺思い出しながら書くか、他のネタが有ればナニか別の記事になるかもしれない
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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2016年8月 8日 (月)

悪魔の手毬唄(ネタバレ多数:原作・映像4種・漫画)その1

 と、云う訳で、先日やっと隔週刊の『横溝正史&金田一耕助シリーズDVDコレクション』で2時間ドラマ版の標記作品がリリースされた
 原作を読み切ってから少々経つのだが、その時に取ったメモを踏まえて映像作品4本及び漫画作品1作の比較を行いたい
 調子捲って書いてたらトンでもない長文になって仕舞ったので、今回と次回に分けて纏める事にした、御了承願いたい
 また、今週末はミケでチト今週は忙しくなると思われ、原稿が上がってる分、月曜に上げておく事にした

 先ず、本作の映像化作品が現時点でどの位出ているかをwikiから調べる(敬称略)
劇場作品
 1961年 監督:渡辺邦男 金田一:高倉健
 1977年 監督:市川崑  金田一:石坂浩二

TVドラマ
 1971年 金田一は登場せず(火曜日の女シリーズの『おんな友だち』、1時間枠全5回)
 1977年 金田一:古谷一行(横溝正史シリーズ、1時間枠全6回)
 1990年 金田一:古谷一行(2時間ドラマ)
 1993年 金田一:片岡鶴太郎(2時間ドラマ)
 2009年 金田一:稲垣吾郎(2時間半ドラマ)

 漫画としてはwikiには先日紹介した、つのだじろう氏と今回比較するJET氏の2名のみ記載されているが、ナンか調べれば他にも出てきそうな感じである

 この内、今回は原作・1977年映画(以下『石坂版』)・1977年TV(以下『古谷版』)・1990年(以下『古谷2時間版』)・2009年(以下『稲垣版』)・漫画(以下『JET版』)を比較したい
 鶴太郎版は昔見た気もするが覚えてない…もしかすると、一時期TVドラマを一切見なかった時期があるので、見てないかも知れない

 さて、此処からは毎度の事ながらネタバレが非常に強い…ってか、今回はマジにコレだけで本読まなくても大抵判る様な書き方になって仕舞ったorz
 数行間隔を空けるが、了解の上で読み進めて欲しい





 さて、先ずは舞台になる時代及び場所である
 原作では昭和30年7月に金田一が村に訪れ、最初の事件(多々羅放庵の失踪)は8月に入ってからである
 場所は岡山県の寒村『鬼首村』…同名の村が別作品『夜歩く』に登場するが、こちらは古谷版のTVだけ視聴して原作未読であるが『同県同名だが別の村』と云う認識がされているらしい
(登場人物・地形描写は全く違うし、位置描写も違っているらしい)
 石坂版は昭和27年の記述で時期も8月では無い様だ…金田一は常時マントを着用しているし、画面等から見える季節は冬になっている…ロケの都合との見方が強いが、まぁ事件に大きな影響は無い
 古谷版は石坂版と同じく昭和27年、ただし此方は夏である…特に月日の表示は無いが、画面から見える季節は間違いなく夏である
 古谷2時間版も古谷版と同じく昭和27年夏…冒頭で事件概要を説明する磯川警部と金田一が一緒にカキ氷を食べている
 稲垣版は原作と同じく昭和30年、ただし、秋と明示される…コレもロケの都合だろうか
 JET版も原作と同じく昭和30年の話になっている…季節は説明されていないが、1コマだけ8月のカレンダーが描かれている事で、まぁ普通に考えれば8月なのだろう…しきりに汗を拭う描写が有るし
 場所は岡山県鬼首村、コレはどの作品も同じで、文明度は人力車が来れる道があるかバスが日に数本有るか…程度の差であり、まぁ現代日本からすればソレナリに未開の寒村と云ったイメージは、どの作品からも見て取れる
 此処で気になるのが昭和30年とする原作・稲垣・JET版と昭和27年とする石坂・古谷(両方)版である
 物語の根本にある『過去の因縁』に起因するが、コレが昭和7年の事、と云う事で固定するので、石坂・古谷版は丁度ソコから20年後と切りの良い時代設定にしたのだと思われる

 次にその『過去の因縁』について比較する
 『恩田幾三』と名乗る男がモール飾りの副業を農村に持ち込む事から事件は始まる
 葡萄栽培からワイン醸造までの業務を始めて大当たりした村の新興勢力『仁礼家』に対抗し、コレに飛び付いたのが旧家『由良家』である
 由良が一時的に金を出し、参加の村人に副業を推奨、かなり順調に進み、作業用機械の代金が全部恩田に回収された所で丁度実家を次ぐ為に村に帰省した亀の湯の旦那『青池源治郎』が詐欺と見抜き、恩田の塒にねじ込むが逆に殺害され、以降恩田も失踪して仕舞う…と云うのが概要だが、コレが昭和7年の事になる
 原作では、モール会社の元受が倒産しており、結果的に詐欺になったが、恩田は詐欺を行う積りは無かった可能性も示唆されている
 石坂版ではモール元受の倒産は無く、最初から詐欺の積りであった事とされている
 古谷版ではモール元受は倒産しているので原作通り、更に時代も『20年前』とのみ云っており(上記舞台が昭和27年だから)昭和7年と推測出来るが明示されていない
 古谷2時間版では古谷版と同じく『丁度20年前』と云う云い方で昭和7年を暗示しているが、モール元受については石坂版と同じく倒産の描写は無い…つまり、恩田の詐欺確定である
 稲垣版は昭和7年11月とハッキリ明示して説明するが、やはりモール元受の倒産については描写が無い
 JET版では石坂版に準拠しているのか、モール元受の倒産の話は無く、詐欺確定で話が進む
 …さて、此処で昭和7年に拘ったのには理由がある
 被害者である青池源治郎は都会で活動写真の弁士(以下『活弁』)をしていたのだが、トーキー映画の台頭、そして洋画『モロッコ』において『スーパーインポーズ』技術による字幕が付与される事で大ヒットとなり、結果として活弁が必要なくなった…と云う時代背景がある
 コレが元になる為、恩田事件は『モロッコ』公開の翌年、昭和7年である必要が有るのだ
 ちなみに、源治郎が活動していた都会であるが、原作を含めほぼ全ての作品で神戸となっている中、古谷2時間版でのみ浅草となっている…コレは、警視庁の警部である等々力(シリーズレギュラー)を登場させる為に必要な変更で、後で源治郎の写真を取り寄せる為のコネにも使われている

 話は変わるが、今度は金田一の来村動機を見る
 原作では、難しい事件を解決して休養を欲した金田一が勝手知ったる岡山(所謂岡山編…と云われる位、金田一は岡山で事件を解決しており、本作はその中でも比較的後期(時系列的にも)の作品で、色々気兼ねが無くなっている)に向かい、馴染みの警部、磯川に場所斡旋を願い出た所、紹介されたのが鬼首村であった
 磯川は磯川で上記昭和7年の事件を再調査して欲しい思惑があり、正に『鴨が葱背負って』状態だったのだろうwww
 兎に角、昭和7年の事を穿ろうと思った矢先に当時の重要な証人である『多々羅放庵』が失踪し、事件が勃発するのである
 故に、コンビを組むのも基本的に磯川とになるが、所々で上記岡山編である『獄門島(瀬戸内)』や『八つ墓村(岡山と鳥取の県境)』等の事を思い出す描写もある
 石坂版では、もっとダイレクトに磯川から探偵業務を依頼したい旨呼ばれた先で、上記恩田事件の詳細を聞かされる形である…石坂版は劇場シリーズであるので、単発で楽しめる仕様にする為か、金田一の旧知は基本的に出ないのだが、本作の磯川と最終作『病院坂の首縊りの家』に登場する老作家夫婦だけが旧知の存在として登場する
 故に、事件の捜査主任として登場する立花警部(原作では警部補)は金田一の業績を知らないが、磯川は知っており、絶対の信頼を置いている
 古谷版ではやはり養生に鬼首村に来ている…が、事務所の家賃滞納問題でトンボ返りする羽目になり、帰省途中に放庵の元妻『おりん』に出会う…結局、嵐の様な大雨で電車に乗れず、泊まった宿でおりんは既に1年前に他界している旨を聞き、放庵宅に取って返す形になる…結局、恩田事件も含めて日和(このTVドラマシリーズには原作に有る磯川は登場せず、シリーズレギュラーである日和と云う警部がほぼ常に相棒になる)の策略である事が後で判る訳だが
 古谷2時間版では、等々力と金田一の両方が磯川に招かれて鬼首村に来ている…等々力は来村と同時に本庁に呼ばれて東京に戻らされるが、古谷一行が演じる金田一のシリーズで磯川が登場するのは、この作品だけである…兎に角、磯川も来て貰ってから用件(恩田事件の再調査)を云い出すと云う騙し討ちはしているのだが
 ちなみに原作に登場するキャラである岡山県警:磯川と警視庁:等々力は共に金田一の良きパートナーであるが、この二人が直接会うシーンは殆ど無い
(まぁ岡山と東京だしねぇ…)
 映像化作品でも当然、会う事は殆ど無いのだが、この作品はその非常に稀な例の一つである
 稲垣版では、やはりシリーズレギュラーが橘署長で、その紹介であり、策略であるのは登場人物を入替えただけで原作準拠と云えなくも無い
 JET版は漫画だけに役者の都合を考えずに登場人物を描けるのが強みで、磯川の作品は磯川で、等々力の作品(東京モノ)は等々力で描き分けている…当然、原作準拠で磯川が策略的に呼んでいるwww

 コレに併せる話になるが、金田一の素性について、原作では『磯川の紹介』である事、上記の通り岡山編だけでもソレナリに後期の作品だし、東京等でも難事件を解決しているので、その名声を一部(放庵や仁礼家の現当主『嘉平』)は知っている所から始まる
 石坂版では上記の通り磯川は知っているが、それ以外は全く知名度が無く(亀の湯で磯川が紹介しているので、亀の湯の女中や息子の『歌名雄』は知っているが)風体から余り頼りになるとは思われてはいない風である
 古谷版では放庵失踪の捜査開始時点で日和から紹介され、それ以前に知っている者はいない様である
 古谷2時間版では、やはり磯川が紹介しており、亀の湯の面子は知っているが、村内では他に知る者はいない感じである
 稲垣版では、シリーズを通して作家の横溝先生が書いている『自分が解決した事件を小説化した本』を持ち歩いて自己紹介し捲るので、逆に有名である
 JET版では古谷版に近いのか、事件発覚まで特に知らされて無い状態であった

 次に肝心の手毬唄についてである
 原作では、読者に紹介する必要も有った為か、冒頭でお喋りお庄屋の唄を1番とする唄(2番が枡屋、3番が秤屋)が記載される
 ちなみに、お庄屋、枡屋、秤屋…そして後に出る錠前屋と云うのは村に古くから有る屋号と呼ばれる風習で、お庄屋は代々お庄屋をしていた多々羅放庵、枡屋は由良家、秤屋は仁礼家、錠前屋は別所家を指す
 話は戻るが、1番目にお庄屋を歌う唄は本来の手毬唄としては様式が可笑しい…三羽の雀は娘の事を歌っているのに1羽目の雀がお庄屋を歌っている…この唄を外して三羽目が歌う娘唄がある筈…と原作では推理される
 また、金田一がこの唄を聞くのは仁礼家の娘『文子』が殺された後に上記お庄屋唄を1番とした3節を聴く事になる
 この事件の前に由良家の娘『泰子』が殺されているのだが、このときに聞くタイミングを外されるのだ
 唄を教えるのは由良の隠居している老婆なのだが、この老婆が食えない性格をしている
 一羽目の唄に準えてお庄屋が失踪、二羽目の唄に準えて自分の孫が殺された事に気付き、三羽目の雀が歌う仁礼の娘も直ぐに殺される可能性に気付きながらも『自分の孫だけ殺されるのは癪だ』と態とタイミングを外した嫌いがある
 また、後で登場するが、お庄屋歌を外して娘のみを歌った唄では、三羽目の雀は錠前屋を歌っており、上記『別所家』の事になる
 別所家は恩田事件の際、恩田幾三が村に逗留していた頃に世話をしており、恩田失踪の後に娘が生まれている…ソレが『千恵子』であり、村では詐欺師・殺人者の娘と迫害を受けたが、東京でブレイクして『大空ゆかり』の芸名で大スターとなっている
 石坂版では泰子殺害時に一羽目として由良の見立て唄を、文子殺害時に二羽目として仁礼の見立て唄を聞かせており、単にボケて殺害状況を聞いて思い出しているだけ、と云う描写になっている
 三羽目の別所の唄は由良の隠居からでなく金田一が唄の載っている冊子の所在を突き止め、調べている
 古谷版では文子殺害時にやはり由良の隠居から一羽目:由良、二羽目:仁礼の唄として聞かされる…隠居はボケてはおらず、原作と同じく自分の孫だけ被害に遭った事に対する抵抗の意味で、文子殺害時まで唄を公表していない描写である
 三羽目の唄は別所の唄になるが、放庵の捜索に関連して神戸にいる放庵の血縁から冊子を借り受け調査される
 古谷2時間版では石坂版と全く同じで、由良の隠居はボケており、泰子、文子の殺害時に其々その見立ての唄だけを思い出して聞かせて来る…三羽目の唄は金田一が岡山学芸大学で冊子を調べて確認する
 稲垣版では映像作品では唯一、お庄屋唄が金田一の耳に入る
 放庵や亀の湯の娘(歌名雄の妹)『里子』も歌うほど、村では知れ渡っている唄の様だが、一羽目がお庄屋の唄なので、別所の唄が無い
 原作と同じく、その違和感から金田一が神戸に調べに行って三羽目の別所唄を突き止める
 JET版では泰子殺害時に一羽目の由良唄を聞かせるが、以降の唄は『忘れた』と聞かせなかった…が、原作と同じく態と教えなかった節の描写がある
 一羽目にお庄屋を歌った唄は、私の見た映像4本、漫画1本では稲垣版でのみ紹介されていたのは特記すべきだと思う
 また、由良の隠居がボケて本当に唄の続きを忘れていた場合と、最初に殺されたのが自分の孫娘である事から、ある意味捜査の協力を拒む意味で敢えて教えてない場合とに分かれるのも見て取れる

 さて、此処で殺される被害者についてに話を変える
 本作では珍しく全ての映像作品及び漫画で被害に遭う人間は同じ人間『だけ』である
(映像化作品で追加の被害者も無いし、原作で殺されてる被害者が助かる例も無い)
 最初の被害者は失踪扱いであった放庵
 次の被害者は『枡で量って漏斗で飲んで』の唄に見立てられ、滝壺に固定された上で口に漏斗を、その上に枡を設置され、滝の水が枡から零れ落ち、漏斗を通して口に入る様設置された由良泰子
 3番目の被害者は『大判小判を秤に掛けて』の唄に見立てられ、仁礼のワイン醸造庫に縁起物の大判飾りを付けた竿秤の近くで殺された仁礼文子
 最後の被害者は別所千恵子の身代わりになり、『小町娘の錠前が狂った』に見立てられ、辻の地蔵脇で近くに錠前と合わない鍵の組み合わせを置かれて殺された青池里子
 以上4人である
 ちなみに娘唄三羽目の『小町娘』は、所謂性的に不能の女性を指す隠語である
 故事に有る小野小町と云う女性は絶世の美女であったにも拘らず、夫を持たず一生貞操を守った事から身持ちの固い娘、転じて性的不能の娘を指す隠語になったとされている
 となれば『錠前狂えば鍵合わぬ』と云う歌詞の意味も自ずと知れよう

 放庵はお庄屋殺しと村で呼ばれる草の毒で殺害され(お庄屋唄でその様に歌われている)、死体を隠されている
 作品毎に『最近死んだ他の村人の墓に埋葬した』とか『沼に捨てた』とか多少の違いは有るが、物語に影響は少ない
(放庵が失踪扱いの時点で、最重要容疑者となり、捜査が迷走する)
 また、原作とJET版でのみお庄屋殺しは『沢桔梗』と云う毒草である旨描写されるが、実際の沢桔梗は確かに毒草だが、人一人殺すには結構な量が必要になる程度の毒なのだそうだ
(原作では毒を盛られて苦しんでる所を首を絞めて殺している…が、検死結果では盛られた毒のみで死ぬ量だった事も判っており、苦しむ放庵に対し、楽にしてやる意味で止めを刺したのではないか、とも思われている)
 ちなみに上記の通り舞台の季節が違う所為か、石坂版ではお庄屋殺しはヤマトリカブトと云う別の植物となっている…トリカブトって位だから、毒性は多分桔梗より強く、ソレこそコレだけで毒殺は可能だったろう
 更に云えば、古谷版(両方)と稲垣版では『お庄屋殺し』と云う俗称のみ紹介され、毒草の一般名称は一切出て来なかった事を付け加えておく
 また、放庵への犯行直前に『おりん(放庵の別れた元嫁)』を名乗る老婆と金田一が遭遇しており、コレが容疑者(又は放庵の変装)と捜査されるが、古谷2時間版のみ、放庵殺害後(ただし、失踪扱いとなる前)に、金田一は磯川と一緒に居る時に目撃している
(他の作品は原作も含めて遭遇は金田一のみ)
 また、このおりんであるが、放庵に復縁願出の手紙を出しているが、コレが数年前の話であり、実際には1年前に他界している事が明らかになる
 金田一は放庵に依頼され、復縁を了解する返事を代筆(放庵にはおりんの死も復縁依頼が数年前である事も犯人に隠匿されている)し、本来コレが『おりん』が村に来る伏線になる訳だが…
 原作・石坂版・JET版では描写されているが古谷版(両方)・稲垣版ではこの下りが無く、突然おりんが登場する事になっている
 最後に放庵失踪の現場にオオサンショウウオが飼われているのが見付かるのは原作から映像作品全てに共通する
(JET版ではカットされていたかな?)
 しかし、原作では『別れた元妻が帰ってくるので、精を付けようとした』と説明されているが、映像作品では一貫して『放庵は鳥目で、特効薬として食う積りだった』とされている
 一応、原作でも夏は『体力が落ちて鳥目がちになるので』と、精を付ける意味は鳥目の一時的な回復を狙った面も有る事を示唆しているが、まぁ色好みの爺ぃが元妻を迎え入れるのだ、意味合いとしては押して知るべしだろう
 兎に角、犯人がおりんに化けて殺害する訳だが、夜(当時は照明が然程明るくないので、鳥目では人の見分けが付かない)であった事が放庵が簡単に騙された理由にしている
 ただし、殺害してから食事等の偽装をしている稲垣版でのみ、サンショウウオは登場するモノの、その用途や理由については言及していない

 泰子の殺害状況については、原作準拠で全ての作品に共通している
 ただ、JET版でのみ、泰子の性格が高慢である描写がされ(原作にもその様な描写は無い)、原作準拠の動機と併せて動機の一因とされている事だけ特記する

 文子の殺害状況に一番差が出ている
 原作では醸造庫の樽の陰で絞殺され、座らされた形で腰ベルトに竿秤が差さっている形で発見される
 石坂版では絞殺死体が樽の中に放り込まれており、肩から上がワインの水面から出ている…更にその上に竿秤が飾られているのである
 古谷版では原作準拠で樽の脇に座って腰に竿秤が差さっている
 古谷2時間版では石坂版に準拠して樽の中に放り込まれて頭上に竿秤が設置される
 稲垣版が一番凄惨で、文子が樽の上に吊るされ、竿秤は文子の喉元に突き刺さっており、ソコから血が伝ってつま先からワイン樽に滴っている形であった…殺害方法もコレで、後ろから近付いた犯人に気付いて振り返った所に槍の様に喉元を一突き(謎解き時の殺害シーンの再現)と云うカナリ残酷なシーンであった…他の作品では一様に(原作含めて)絞殺が死因である
 JET版は石坂版・古谷2時間版に準拠している
 また、文子殺害の晩に、前日死亡した泰子の通夜の席で由良家屋敷の壁におりんを思わせる老婆の影が映し出され、一時パニックになる(原作では、後から金田一・磯川に報告されるだけで、大騒ぎにはなっていない)のだが、この描写が古谷2時間版だけカットされている

 里子の殺害状況は、原作通りだとチト映像化に問題が有ったのかも知れない
 原作では、里子は基本的に和服で過ごすのだが、この時は千恵子の身代わりとなる為に洋服に着替えていたのだ…犯人がソレに気付かず殺害してから『被害者が違う』事に気付く
 そして身代わりであった事を隠す為、着替えさせようとするのだが、発見が早く脱がした所で和服を着せる事が出来なかった
 …つまり、里子は下着姿で地蔵の陰に隠された状態で見付かるのだ
 石坂版では和服のまま路上放置であり、犯人は警察が里子と断定するまで被害者が違う事に気付いていない描写がある
 古谷版では和服のまま路上放置である…が、犯人は間違いに気付いていた描写がある
 古谷2時間版でも和服のまま路上放置であるが、犯人が殺害時に間違いを気付いたかどうかの判別が難しい
 稲垣版では原作準拠で身代わりの為に洋服に着替えているが、特に脱がされてはいない…しかし、殺害時に犯人は間違いに気付いた様である
 JET版はやはり漫画の強みで女優の事など考える必要が無い為、半裸(てか、洋服の切れ端だけが纏わり付いてるだけの、ほぼ全裸)で発見される、また、地蔵の陰に隠されている描写もあり、殺害時に間違いに気付いたのだとソコから判断出来る

 …と、此処までで結構な字数になっており、以降も調子に乗ってたら12KBを超える文章量になっている…丁度以降の部分は事件の真相に迫る部分だし、この辺で1回〆て置きたい
 次回はこの続きを予定している
 ソレまで皆様、お待ち戴ければ幸いです
 御多幸をお祈りしております^^

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2016年5月17日 (火)

獄門島 読破(ネタバレ多数)

 と、云う訳で最近、乱読している横溝正史の金田一モノだが、獄門島を読破した
 大昔、小学生の時分に図書クラブ(課内クラブ)に所属しており、その時に一度読んだが、小学生用のハードカバーだったので、多分有る程度年少用にスポイルされたモノだったのだと思う
 故に、有る意味初見に近い積りで読んだ
 話の内容は概略として映像化作品を複数見ているので、ある程度把握しているが、今回もまた違い等を列挙してみたい

 さて、この作品、現時点で映画2本とTVドラマ4本の計6作の映像化作品がある
 取り敢えずリストアップすると(wiki情報)

劇場映画
 1949年(金田一は片岡千恵蔵:前後編仕様)
 1977年(金田一は石坂浩二)

TVドラマ
 1977年(金田一は古谷一行:1時間枠 全4回)
 1990年(金田一は片岡鶴太郎:2時間半枠)
 1997年(金田一は古谷一行:2時間枠)
 2003年(金田一は上川隆也:2時間枠)

 この内、私が見ているのは石坂版映画と古谷版(両方)、鶴太郎版の4本で、映像化作品では無いが、JET著の漫画版も所持している
 以降は原作・石坂版・古谷版・古谷2時間版・鶴太郎版・JET版を比較して書いて行きたい

 先ず時代背景だが、コレは殆ど変わらない
 まぁ最後のオチが復員詐欺(戦死した戦友の実家に『生きている』と知らせると御馳走も礼も奮発するので、ソレを当て込んで詐欺を行う事。広報等政府通達で戦死が判明すると出来ない詐欺だから、戦後直ぐでないと不可能)なので、昭和21年で固定され、季節も見立ての『季違い』が鍵になるので夏~初秋で固定する…筈なんだが
 『季違い』を『気違い』に聞き違えるミスリードが放送自粛用語に引っかかる関係で、飛ばされたり改編されたりと本来のキモの筈なのに映像化の時点で結構不遇である
 実際、殆どが夏又は8月等、夏を示しているが、古谷2時間版では季節の名言をせず、金田一は終始マントを着込んでいるので、秋~冬なのかも知れない

 場所は瀬戸内、岡山県側の孤島なので、登場警察は岡山県警となり、原作では磯川警部とペアを組む事になる
 石坂版では等々力警部(原作では等々力警部は警視庁の警部で、シリーズ中盤以降になる東京モノでコンビを組む、病院坂等は等々力警部が活躍する…病院坂の下巻では定年退職をして、この人も私立探偵になるんだが)である
 古谷版・鶴太郎版・JET版でも原作と同じ磯川警部だが、古谷2時間版ではシリーズ後半レギュラーだった河合警部(オリジナルキャラ)になる
 まぁ尤も、原作では磯川警部と等々力警部のキャラクターは書き分けられているが、映像化作品では金田一が推理するのに必要な証拠・情報提供と云う役割と、空回りする公的捜査の象徴としての警察(捜査主任)が必要なの出ているに過ぎず、役名は何でも、やってる事は殆ど変わらない事が多い
 石坂版についてのみ、シリーズを通して『担当警察官は金田一を知らない』と云う設定で始まるので、警察は一貫して非協力的だが、一緒に捜査して行くに従い打ち解ける展開になる

 本来、金田一が世間に出る2作目の事件(1作目は本陣殺人事件)で、一緒に捜査した磯川警部は本作では既知と云う話であり、古谷版・鶴太郎版・JET版でも磯川警部と既知と云う設定で話が続く
 当然、古谷2時間版での河合警部もシリーズレギュラーなので、金田一とは既知である
 また、警察関係では島の駐在である清水巡査が金田一をある程度信用しながらも行動が妙だ、と云う事で最初の花子殺害事件後に1晩留置所に入れる(その間に雪枝殺害が起こる)のだが、原作ではただ『金田一が怪しい』だけでなく、磯川警部も遠因の一つとなっている
 と、云うのも、やはり話の途中で一つの核となる部分に海賊行為をしていた復員兵が島に1人潜伏する一節が有る(復員すると思われていた一と勘違いする等、物語にも絡んでくる)のだが、ソレの捜索で清水巡査は花子殺人の前に磯川警部と顔を合わせるのだ
 その際、磯川警部が思わせぶりな(友人とは云わずに『知っている、大物だ、大事件が起きるかも』の様な)事を吹き込んだ所で、殺人事件が起きたモノだから…と云う背景も有った
 コレが映像化されたモノは私の見た4作には無かった
 また、古谷2時間版では清水巡査が本庁栄転を狙う野心家で、勇み足で金田一を拘留、河合警部に怒られる…と云う展開も有った
 また、この時は河合警部の登場が非常に早く、拘留直後に河合警部が誤解を解いて釈放したので、雪枝殺害時に金田一はフリーになっていたのだ…が、雪枝が行方不明と云う夜には本鬼頭で留守居をさせられており、結局、犯行を防げない…と云う展開になっている
(他の映像作品・漫画では基本的に『事件慣れしており、清水巡査よりも早く証拠品の発見等をしている等、素人とは思えない言動』と『全てが身内に近いこの島で殆ど唯一の部外者』と云う立場から拘留に至った、とされている)

 場所及びソレに伴う警察関係は以上かな
 次に金田一の来島動機だが、鬼頭千万太の遺言と云う基本線は変わらない
 原作・古谷版・鶴太郎版・JET版の4作が戦友である千万太を看取っており、その際の遺言で『自分が死んだら3人の妹が殺される、ソレを防いでくれ』と託されている
 鶴太郎版でだけ、千万太は戦地で病死となっており、原作を含め他の3作では、戦争では生き残り、復員船の中で病死となっている
 更に、鶴太郎版では『祖父が』3姉妹を殺すと明言しており、来島当時、嘉右衛門が戦時中に病死している事を知った金田一が、事件は起こらずに済むと安心する場面があった
 石坂版では『千万太を看取ったのが金田一の友人であり、遺言を託されたのもその友人。ただ、その友人も病気で来れなくなったので名代として金田一が来た』と云う展開になっている…故に、この作品では金田一は千万太の顔を知らないで島に来ている
 更に古谷2時間版でも金田一が千万太を看取ったのは事実だが、厳密には戦友ではなく、金田一の依頼人と千万太が同じ病院に入院をしており、見舞いを重ねる内に知り合いとなり、依頼を受けるに至った事になっている
 その関係で、職業が探偵である事は速攻でバレている
(来島動機になる遺言云々は伏せているが)
 更に、古谷2時間版では、千万太の遺骨を持参しており、本鬼頭の家に入る際『鬼頭千万太君の御帰還です』と口上を入れて家に入っている
 原作・古谷版・鶴太郎版・JET版は千万太の金田一紹介文(和尚・村長:荒木・村の漢方医:幸庵の連名宛て、静養したいとの要望に沿って島を紹介した、と記載)を持って来島しており、本来の目的を隠している
 石坂版では上記の通り、千万太と金田一に面識は無いのでの絶筆と云う形で『故郷を目前に死ぬのは嫌だ。島でやらねばならない事が有る』と書いた手紙を友人経由で受け取っており、千万太の関係者だと身を立てている
 古谷2時間版では、遺品として千万太の腕時計を持参しており、手紙等は持っていない

 人間関係も大局では大きな違いは無いが、結構詳細では違いが出ている
 本鬼頭に千万太と一(古谷2時間版では肇)、被害者になる月代・雪枝・花子の姉妹と一の妹の早苗、住み込み女中に勝野、千万太の父親の与三松、大戦中に死亡した嘉右衛門は大抵揃っている
 与三松は気を違えている設定が放送自粛に引っかかるのか、古谷2時間版ではお小夜を追い出された反動でヒロポンに手を出して中毒になっている設定で、鶴太郎版ではソモソモ登場していない
(千万太の父親なのだが、殆ど説明無しで画面登場も無かった気がする…了念和尚の口頭説明だけで飛ばされた気がする)
 勝野については、石坂版では大きく扱われている(後述)が、古谷2時間版では登場していない
 分鬼頭では儀兵衛、お志保(石坂版では巴)、鵜飼章三が基本的に揃っているが、儀兵衛は既に死んでいる(古谷2時間版)と云うケースがあった
 村の顔役である了念和尚、村長の荒木、漢方医の幸庵(古谷版では鍼医師)も全員全作品に登場している
 了念亡き後、寺を引き継ぐ典座(食事等雑務を担当する修行僧)である了沢も全作品に登場している
 更に、古谷2時間版では、嘉右衛門・肇と早苗の父・儀兵衛は3人兄弟となっており、分鬼頭は分家と云うより、兄弟喧嘩での分裂となり、肇は嘉右衛門の甥(早苗は後述)と云う設定で話が始まった
 同じく古谷2時間版では、月代が島を牛耳る事を意識しており、現段階で実質本鬼頭を取り仕切っている早苗に敵愾心が有る描写がある

 最後に被害者3姉妹の母親であるお小夜だが、唯一古谷2時間版でのみ島を追い出されただけで生きており、嘉右衛門への恨みを金田一にブチ撒けている

 更に古谷版では与三松が気を違えて座敷牢に…と云う展開は無い
 原作を含み殆どの作品で、座敷牢、一つ家、お小夜の発狂・死亡、与三松の発狂の関係は以下の通りになる
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →お小夜、出産を期に本鬼頭に入る
 →お小夜、聖天を名乗り加持祈祷を始める(与三松が一つ家を作る)
 →お小夜、在る程度信者を集めて新興宗教になり、寺を攻撃する
 →了念和尚の怒りに触れ、網元・寺を敵に回す事で旗色が悪くなる
 →お小夜、発狂(信者を折檻して半殺し→信者離れ)
 →嘉右衛門、座敷牢を作り、お小夜を隔離
 →お小夜狂死の後、与三松発狂、座敷牢に

 古谷版ではこうなる
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →嘉右衛門、お小夜の本鬼頭入りを認めず、与三松を摂関
 →与三松、摂関の後遺症で精神障害
 →お小夜、与三松の治癒を祈り加持祈祷を始める(一つ家が出来る…誰が作ったんだ?)
 →お小夜、了念・村長・幸庵に与三松の精神状態の発端と攻め立てられ入水自殺
 →お小夜の自殺を知って、与三松の精神状況悪化、隔離(特に座敷牢にはなってない)
 …ナンか、お小夜さん余所者ってだけで迫害受けてるだけの良い人ぢゃん

 また、古谷2時間版では上記の通り与三松はヒロポン中毒と云う事になっているが、その辺も展開を書くと
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →与三松、お小夜と別棟(コレは与三松が建てたか)で生活
 →嘉右衛門、与三松・お小夜の家に殴りこみ
 →お小夜、一つ家を建てて嘉右衛門を呪う祈祷
 →嘉右衛門、お小夜に毒を盛り殺人未遂
 →お小夜、単身島を逃げ延びて神戸で暮らす
 →与三松、ヒロポンに走り、中毒に
 此処までお小夜が嫌われた理由が『単に余所者だから』なのだから困ったモノで、まぁ昭和初期~中期辺りまでの島国根性が抜けない時代、と云う事で目を瞑るしかないだろう

 石坂版ではお小夜の発狂が確認され、座敷牢に閉じ込められる前に嘉右衛門に手篭めにされる描写も有った
(その時、与三松はまだ正気だった筈だが、どうしてこうなったwww)

 コレらに関連するが、原作を含めて殆どの作品で与三松は気を狂わせている設定となっており、基本的に怒鳴り声と唸り声位しかない
 しかし、古谷版では発作的に怒鳴る・唸るは在るのだが、意識はハッキリして台詞も有る…ただ、娘の死亡を聞かされても『清い体のまま母の所へ行った、私も早く行きたい』と少々常軌を逸した思考回路をしている設定である

 殺人トリックも、基本的に全て同じで原作に準拠しているが詳細に違いが出ている
 石坂版は以下の変更が有った
・花子については撲殺している(原作を含め、他は殴って昏倒させた所で絞殺している)
・雪枝殺害自体は原作準拠だが、梃子の原理で鐘を持ち上げた際、強風により棒が外れて鐘が落ち、雪枝の首が切断されて海に落ちる描写があった
・犯人を変えた(後述)関係で、月代の殺害に『片手で手拭を使って絞め殺す』と云う難しい事をする為のトリックが省略されている
 古谷版は幸庵が雪枝を、村長が月代を殺害している(この2組について犯人を入れ替えている)ので、幸庵の腕の負傷(雪枝殺害の後に負傷している)は月代殺害と何の関係もなくなっている
 古谷2時間版でも数点違いが有るので箇条書きにする
・花子殺害の為に呼び出した手紙は了念が書いており、筆跡から犯人が判る展開になった
・古谷版と同じく幸庵が雪枝を、村長が月代を殺害しており、幸庵の腕も負傷する描写が無い
・雪枝遺体発見の釣鐘は『天狗の鼻』と呼ばれる崖っぷちではなく、洞窟っぽい通路上であった事で、釣鐘が歩く(擬装用の演劇で使う釣鐘を見間違う)辺りの描写が無い
・俳句の見立てである事を月代殺害の前に金田一が気付き、月代の警備を厳重にと依頼して有ったが、警察のドジで殺害される(金田一はお小夜に会いに神戸に出ていた)と云う展開になっている
 鶴太郎版では花子殺害の呼び出した手紙の渡し方が桂の木ではなく、水神様の祠に変更されていた事、和尚が雪・月の呼び出しには金田一の名を騙った旨告白している事等が変更されている
 最後にJET版は完全に原作に準拠し、幸庵は雪枝殺害の時期に復員兵と立ち回り、左手骨折を負い、月夜殺害にはトリックを使った

 犯人も石坂版を除いて原作に準拠している
 コレは映画公開が同年のTVドラマ版(古谷版)と重なった為に原作者了解の下に脚本を変更、雪・月の実行犯を勝野に変更したのだ
(また、この事に伴い、横溝・市川・石坂コンビでの映画5本全てで『女性が殺人を犯す』と云う定説が出来る事になる)
 この動機を作る為、勝野は本鬼頭で住み込み女中をした際に嘉右衛門に手篭めにされ、一と早苗を産んだ(つまり、早くして亡くなったと云うこの兄妹の両親というのは、誤魔化す為の偽装)と云う設定を新たに加えた

 次に、この作品を語る上で外せないのが推理の鍵になる了念和尚の呟き『きちがいじゃが仕方あるまい』であるが、この辺りを比較する
 コレは見立て殺人の元になる俳句は鶯を歌った春の句であるのに、事件の舞台は夏~秋にかけてである事を嘆いた呟きだったのだが、コレを気を違えている与三松の事と金田一が勘違いする一節である
 『気違い』が放送自粛の対象になった所為で、放送倫理と関係ない劇場映画である石坂版・漫画作品であるJET版では普通に使われているが、古谷版では『きが変わっているが仕方がない』と云い回しを変えている
 古谷2時間版ではソモソモこの辺りは省略され、鶴太郎版では樹が違っている(鶯の歌だが、吊るされたのは梅の木ではなく銀杏の木)と台詞は使うモノの、ミスリードする先を変えて使っている
 ちなみに原作だが、花子殺害現場で金田一が『聞いたと主観した台詞』は『気ちがいじゃが仕方がない』だが、最後の推理説明の際に金田一が『そう聞こえたと思ったんですが、実際には「季が違っているが仕方がない」と言っていた』と語っている

 犯行動機も基本的には殆どが原作に準拠しているが詳細に変更が有る
 古谷版では、お小夜憎しが先に立っていたのか、一の生死は関係無く千万太が死亡していれば犯行を実行する積りだった…と説明されている
 つまり、復員詐欺が有ろうと無かろうと、金田一が千万太の訃報を届けた時点で犯行動機は成立して仕舞った訳だ
(まぁ金田一が知らせずとも広報で知らされたとは思うが)
 石坂版の勝野については、和尚にこれ以上手を汚して欲しくない、併せて云えば自分の腹を切って産んだ子を本鬼頭の頭領にしたいと思って、と云う心理であった旨説明されている
 古谷2時間版だけ大きく変わっており、千万太・肇が両方死んだ場合に3姉妹を殺せ、と云う条件になっていた…この場合、復員詐欺で肇が生還と思われていたので動機が成立しなくなる訳だが、肇の戦死通知が実家である本鬼頭に届かず、寺に届いていた(つまり、物語最初から、早苗は復員詐欺に引っかかっていたが、和尚たち犯人3人は肇の死を知っていた)事が逆に嘉右衛門の執念を感じた、としている
 更に、早苗が嘉右衛門の実の娘(肇の母を嘉右衛門が強姦し、産ませた子)である設定が付け加えられ、コレも動機の一つとなっていた事が物語の最後で暴露された

 また、千万太が死ぬと姉妹が殺される、と云う事を千万太自身が知っていた事について、原作では千万太と一の出征前に嘉右衛門から直接話された、と云う事になっており、コレに準拠したのは鶴太郎版である
 古谷版・古谷2時間版・JET版ではその経緯については省略されており、石坂版では勝野が千万太に手紙で知らせた事になっている

 実行犯である村長・幸庵の両名は、原作では犯行を行う気は基本的に無く、了念和尚が実際に『始めてしまったから』犯行を起こした、と云う心理だった
 石坂版でも村長・幸庵は真相を知っていながら故意に隠していた訳だが、コレに付いても消極的な協力、と云う位置付けで説明されている
 古谷版では、了念・村長・幸庵の3名とも嘉右衛門に心酔しており、積極的に犯行をしている感じであった
 他の古谷2時間版・鶴太郎版・JET版では特にソコまで描写されていない

 では、実行犯の主犯格である了念だが、コレも原作では基本的に犯行を実際に行うつもりは無かった旨、告白している
 ただ、千万太の死が一の生還(復員詐欺)の翌日に知らされ、更に雪枝殺害の見立てに必要な釣鐘が返還される(戦争の鉄不足で徴収されていた)と知らせがほぼ同日に来た事で、嘉右衛門の執念を感じて実行に移した、とされている
 映像化作品でも基本的にこの辺は変わっていない

 更に、推理の手がかりになる枕屏風(犯行の見立て元になる句三首の短冊が貼られている)を金田一の寝室に置いた事について、原作ではある種のスポーツマンシップだったとしており、金田一の素性(難事件解決歴の有る探偵)を事前に知っていた和尚が在る意味『途中で気付いて止めてくれる事を祈って』置いた(明言はしていないが、行間的にそう読める)としている
 古谷版では、コレを了念和尚から金田一宛の挑戦と推理し、了念も特に否定はしなかった
 鶴太郎版では、より攻撃的に『千万太の遺言で殺人を阻止しようとした金田一は失敗し、嘉右衛門の遺言で殺人を決行した犯人側は遺言を実行出来た、犯人側の勝利である』と金田一相手に勝ちを名乗り大笑いしている
 その後、一の訃報が舞い込んで『しないでも良い殺人をした貴方も負けだ』と金田一に返されるが、その時は既に犯行を全て終えて満足した和尚は腹を切っており、事切れていた…と云う展開である
 ちなみに他の映像化・漫画作品ではその事に触れていない

 事件解決後の犯人達であるが、原作では一の訃報を聞いて幸庵は発狂の上自殺、村長は島外逃亡、和尚は憤死となっている
 JET版では幸庵が発狂、村長が自殺、和尚が憤死である
 石坂版では和尚・勝野が二人で崖から身を投げている
(村長・幸庵は犯人隠匿等の関係で警察に逮捕される)
 古谷版では、了念は念仏を唱えながら死亡(多分、事前に服毒していたと思われるが、その具体的な描写が無い)、村長が一つ家(月代殺害の現場)で首を釣り、幸庵は天狗の鼻(雪枝殺害現場の崖)から身を投げている
 また、犯人とは関係ないが、寺で了念・磯川を前に謎解きをしている最中、外で分鬼頭のお志保が聞いていると云う独自展開があった
 古谷2時間版では3人とも素直に逮捕されており、特に誰も自殺や発狂等の描写は無い
 鶴太郎版では了念和尚だけ、『やることはヤった』と陰腹を切って自殺、他の2人については詳しい描写は無かった

 最後に事件解決後の舞台だが、原作では用の無くなった金田一は東京に帰るのだが、その際に早苗を誘っている
(金田一シリーズ数少ない(本作と『女怪』のみ)の金田一耕助の恋愛沙汰である)
 石坂版では特にその様な展開は無く、古谷版では真相を知って自殺を図る早苗に対して今後の本鬼頭の未来を説いて島に止まるよう勧めると云う原作と真逆の展開になっている
 古谷2時間版では、早苗から晩酌に誘い誘惑っぽいことをするシーンも有ったが、結局は事件後早苗は島に残る選択をする
 鶴太郎版ではヒロインの座は何故か月代に移っており(鶴太郎の金田一シリーズは、牧瀬里穂が全て違う役で登場し、ある意味プロモーションされていた。この時も月代の配役が牧瀬だった事が金田一との恋愛沙汰になったと思われる)、早苗は最後に島外に誘われる描写は有るが、余り恋愛感情的な感じは受けない
(当然、早苗は島に止まる事を選ぶ)

 最後に金田一と復員詐欺の来島時期のズレだが、鶴太郎版では 金田一と復員詐欺が同じ船で来島してる描写が有る
 原作・古谷版・JET版では完全に入れ違っており、復員詐欺が島外に出てから金田一が到着している
 石坂版では復員詐欺が笠岡に到着した時に金田一が笠岡に到着し、獄門島への連絡船が着く埠頭を聞いているし、古谷2時間版では復員詐欺が本鬼頭を出る時にすれ違っている

 取り敢えず…っても結構長くなったな、以上で読破・視聴した比較検討の結果である
 現段階では悪魔の手毬唄を読んでいるが、コレの映像化作品は映画2本、TVドラマ5本(内、視聴済が映画1本、TVドラマ2本,追加で3ヶ月後位に今回買ってるシリーズで古谷2時間版が付録される予定)である…JET版漫画もあった筈だが未入手、と云う事で比較材料がかなり少ない
 それよりも、悪霊島が映画1本、TVドラマ2本で、先日のDVDコレクションで古谷版を入手したので全作確認した事になっている
 場合によっては、手毬唄の後に悪霊島の原作を読んで記事にするかも知れない

 次回更新は…短く纏めたいなwww
 ナニを書くかは、まだ決めてない
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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2016年3月29日 (火)

ゼロの使い魔21巻

 先週の記事が横溝氏の推理小説読破記事だった訳だが、ラノベは読むのに時間掛からないなぁwww

 と、云う訳でヤマグチノボル氏の最新刊、標記を読破した
 …出来れば、ヤマグチ氏御存命中に書いて戴き、完結して欲しかった作品ではある

 ゼロの使い魔はヤマグチ氏の代表作であり、アニメにも4回(各1クール)放映された、ソレナリに有名なラノベの部類に入ると思う
 私はアニメから入ったのかな? …かなり前の話なのでチト曖昧だが、アニメを見てから原作を読んだ気がする
 ただ、原作が少々進んでからアニメ化されたので、原作を読んでるウチにアニメ化された部分を追い越して話を知って仕舞い、途中、戦記モノに近いほど戦争シーンが多くなる事もあり、アニメでの完結まではしないのだろうなぁ…と漠然と思っていた作品である

 しかし、思いも掛けない方向で完結した
 アニメ第4期は半ばアニメオリジナル展開になり、強引に終了してしまったのだ
 まぁ良く有る話ではあるのだが、原作がまだ続いている作品をアニメ化する時の弊害の1つで、原作を読んで結構好きだった私はかなり残念だった事を覚えている

 しかしまぁ原作は原作、と気持ちを乗り換えて続きを待っていたのだが…物語も佳境に入った20巻発売後、作者のヤマグチ氏が入院された旨の情報が入った
 ついったでフォローしていたので、ソレナリに早い時期に情報は知っていたし、幾つかついったで応援メッセージや質問等にも対応戴いていたので、心配しながらも、ある程度『回復可能』と楽観していた
 で、つぶやきの頻度が落ちてきてるな…回復した様な話も有ったし、執筆準備かな? …と、思っていた矢先の事だが、wikiにも有るが、2013年4月にヤマグチ氏の訃報が発表された
 これは結構ショックだった
 私は大学職員(事務)として本業をしている中、病院事務(附属病院医事担当)をやった事も有り、その時期は(病院が単に大学病院と云うだけでなく、先進医療病院指定を受けていた…つまり、入院患者はソレナリの割合で重症患者なのだ)人の死が結構身近にある事を経験している
 まぁ故に…って事なのか、私が冷めてるのかは知らんが、結構人の生き死ににはドライであるのだが
 ヤマグチ氏も人間だし、死ってのは結構思いがけずに唐突に来ることも知ってるので、その辺はショックではなかった(当然、上記の通り、既にミリオン作家だったにも拘らず、ついったなどでも応対してくれる人柄もあり、個人的に好きな方が亡くなった事へのショックは有ったが…親が死んでも結構平静だったしな、私は)のだが『ゼロの使い魔』が未完で終わって仕舞った事がショックだった

 アニメ4期のあの前後の脈絡を感じさせない唐突な終結(そりゃもぉ酷く、黒歴史扱いしてたから、チト忘れ気味だが…確かイキナリ世界の異変は巨大怪獣の所為だって話になって討伐して終った様に記憶している。虚無の使い手やその使い魔に掛かる伏線とか、全部放り出してのエンディングだった気が…)がこの作品のオフィシャルエンドになって仕舞うではないか
 ついった等でもヤマグチ氏は原作の終わりは見えてる、後は書くだけだと呟かれていた、アニメより面白い終わりが絶対に有る筈なのだ
 …と、思ったのは私だけでは無かった様だ

 先日、21巻が発売された
 あとがきに因ると、ヤマグチ氏御存命の頃から、最後までのプロットは完成されており、万一の際に代筆をされる作家の選定に掛かっておられたそうだ
 御自分の事なので、あと文庫2冊分の執筆も厳しい事は自覚されていたのだろう
 …で、20巻から5年、ヤマグチ氏の訃報から3年経ったが、やっと続巻が発行された
 ちなみに、次巻が最終巻らしい

 さて、前書きが長くなったが、病院坂読了後に読み始めた訳だが…大まかな内容は覚えていたが、中心から少し外れたキャラの名前とか、結構忘れてるなぁwww
(最後の決算の積りか、かなり昔に対峙した敵役等も登場しているし)
 読んでるウチに粗方思い出したのだが
 内容的には先月発売されたばかりの作品なので、ネタバレは避けたいが、最終巻になる次巻が非常に楽しみである
 今まで書かれていた伏線(虚無とは…その使い魔とは、エルフの国で始祖ブリミルが行ったこと、ブリミルを初代ガンダールヴが殺したと云われる事の真実等)は全て書かれるモノと思われる
 ヤマグチ氏も選定に参加したと云う代筆作家(先入観を無くす為に非公開とされている…完結後に発表されるのかな?)の文体も、かなり違和感無く読めるので、その辺の心配も無い
 読んでる最中は…まぁ話自体がラブコメ中心なので楽しんで読んだが、買った時と読み終わった時は少々感慨深く感じたな…
 冒頭にも書いたが、ヤマグチ氏の御存命中に完結して欲しかった…と

 まぁ今回はネタバレ記事が書けないのも有って、かなり短い記事になっているが、書く事が無いってのもナンだよねぇ…
 ブログのネタになる事ばっかの起伏に富んだ人生ってのも疲れるし、偶にはコンなのも良いかも
 次回は…本当、ナニ書くかなぁ…
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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2016年3月22日 (火)

病院坂の首縊りの家、読破(ネタバレ多数)

 ナンか最近は、ウチのブログ検索ワードに八つ墓村が多い
 まぁ映像化作品9本中5作を見比べる(更に原作及び漫画を1作)とか、結構マニアックな事してるしなぁ…

 で、調べてみると『慎太郎 嫌われる理由』と云うワードが目に付いた
 コレは本作で物語の発端が『多治見の財産を里村慎太郎に相続させない為に辰弥を村に呼ぶ事にしたから』であるのが気になるのだろう
 まぁ、犯人の意図からすれば、上記条件が無くとも犯行の動機は有ったのだし、犯行が起きれば『別件で村に呼ばれていた』金田一も乗り出したろう事から、解決もしただろうと思われる
 そう云う意味では、飽くまでも『慎太郎が多治見家内で疎まれている事は、辰弥が巻き込まれる原因』でしかない訳だ
 で、それにしても何故ソコまで慎太郎が嫌われたか…映像化作品では特段説明している作品は少なかった(しかも、非常に印象に残らなかった…誰版だったかな、1件有ったのを覚えている)のだが、その辺を一応書いておこうか

 慎太郎自身は、確かに敗戦を境に没落したが、少佐まで進んだ人物だし、品行も悪くない…確かに多治見姓を名乗ってはいないが、慎太郎の父親が、里村の一人娘を娶った関係で里村姓が無くなる事を危惧し、婿になった形で里村になっただけで、歴とした多治見の血族である
 では、何が嫌われる原因になったか、と云えば、その父親だが、32人殺しの要蔵の弟だった事が原因である
 長男がアレ(我侭放題に育った関係で、村で好き勝手やった上で、婚約者の居る鶴子を路上強姦の上強制的に妾にし、逃げられたと知って32人殺しとか…もぉ何処から突っ込んで良いモノやら)であったのと対照に、非常に人格者だったらしいのが原因の様だ
 大正~昭和初期で長男偏重の時世で、長男よりも人望・能力共に秀でていると周囲に認められた次男は、お家騒動の原因になると思われ、徹底して排除されたそうで…その名残で、その息子であり、没落したとは云え将校にまでなった慎太郎を疎む風習が出来た…と云う事らしい
(併せて云えば、現時点では没落して完全に無一文、多治見に養われてる境遇…と云う事も要因ではある訳だが)
 辰弥も久弥と云う兄(要蔵の実子)が居た訳だが、慎太郎の父の場合は、長男:要蔵に既に子(久弥)が居たので、要蔵が使い物にならん場合でも久弥に継がせれば良かったから不要とされ、辰弥は久弥に子が居なかった(更に云えば、別に久弥は病弱なだけで人格云々で別の跡継ぎを用意する必要が出てきた訳では無い)から呼ばれた…と、云う事なのだろう

 その辺は、本当に明治~昭和初期に生きてきた横溝氏だから書いた話であり、現代の教育を受けている我々は説明されれば『そう云う時代も有ったんだな』で理解はするが、多分ソレを常識と云う形で書く事は出来ないんだろう
 そう云う意味では既に明治~昭和初期(第二次大戦前)辺りまでは時代劇の扱いになって仕舞っても仕方の無い事なのかも知れない


 

 さて、イキナリ話が逸れたが、やっと『病院坂の首縊りの家』の文庫(上下巻)を読破した
 先日、映像化作品(石坂版映画と古谷版2時間ドラマの2本しか作られていない)の解説は行ったので、原作について少々書き留めて置きたい

 以前の記事にも記したが、この事件は確かに色々人が死んだが、結局は脅迫事件だったのだ、と云う印象が抜けない
 舞台は上巻が昭和28年、下巻が昭和48年の港区高輪である
 映像化作品では、石坂版は昭和26年の奈良県吉野が舞台になっており、古谷版は原作(上巻)と同じである…石坂版は場所はロケ地の関係と云えなくも無いが、時代を2年手前にした意味が良く判らない…監督の市川崑氏は横溝作品の造詣に深い人だし、2年ばかり変えた所で何が変わる訳でもないと思うのだが…

 死亡者(事件で死亡した者)数は、山内敏男・法眼由香利(上巻)及び本條直吉・吉沢平吉・山内小雪(下巻)の計5人である
 病死として、本條徳兵衛・法眼弥生(下巻)が物語にかなり重要な位置を占めているが、こちらは間違いなく病死であり、事件性は無い

 映像化作品だと、時間経過が無い(事件勃発の昭和20年代で完結している)事から、徳兵衛が『殺され』、直吉は生き残る(石坂版では直吉も怪我を負うが、古谷版では完全に被害無く生き残る)

 また、吉沢は確かに殺されているのだが、動機がまるで違い(ってか、犯人が違うから動機が違うのも当然であるが)、原作では下巻での殺人犯の共犯となり…まぁ犯人としては、最初から吉沢も殺す事を計画の一部に練り込んでいた…更に云えば、元『怒れる海賊たち』の面子を全員殺す計画だった所を、金田一に阻止されるのだ
(吉沢の殺害は、金田一の予想以上に素早く行われたので防げなかった)
 そう、殺人防御率が激低と云われる金田一だが、此処では殺人計画の途中で阻止に成功するのだ(コレは結構重要な気がする)

 上巻の2人は、映像化作品では在る意味此処が中心になるのだが、2作とも由香利は事故死、敏男は後追い自殺、風鈴に見立てる装飾は敏男の遺言、と、云う事で一致している
 ところが、原作では二人は相討ち(ただし、小雪が現場に到着した時には敏男も遺言(後述)だけをうわ言の様に云っていただけらしく、真相を疑う事も可能だが、取り敢えずソコには言及していない)と云う事の様だ
 そうすると、風鈴に見立てた装飾は何故必要だったか、と云う話になるのだが、幾つかの要因が有った様だ
 1つは、映像化作品でも要因とされたが、敏男の遺言…と云う事も有ったらしい
 2つ目に相討ちの様相が非常に酷く、首から下の死体損傷が激しく観衆に晒されたくなかった事である…特に敏男は鞭で散々シバかれた上に先端の硬い棘部分で陰部を繰り抜かれているとの事で、敏男の名誉の為…と云う点が強い
 最後に、どぉも敏男は由香利解放後も由香利との逢瀬を繰り返していたらしく、周知(怒れる海賊たち)には小雪との結婚と振れており、更に事実婚だった小雪としては、浮気現場での死亡を隠したかったと云う意味もあるらしい

 さて、物語の発端に近い位置にある山内冬子の自殺なのだが、どぉも映像化作品の方が凝って考えている…と云うか、映像化作品では、かなり血縁状態を複雑化させ過ぎている嫌いがある
 原作では、特に冬子と法眼弥生、又は山内敏男と弥生に血縁関係は無く、小雪と敏男も血は繋がっていない
(敏男は冬子の前夫の継子であり、冬子は小雪しか産んでいない)

 由香利と小雪の関係は姪・叔母(由香利の母が小雪の異母姉妹)と云う事になるのだが、まぁスグサマ入れ代わっても気付かれない程に瓜二つ…と云うのは双子でもかなり難しい(私も一卵性双生児の兄弟と同級(小学時分に弟と、中学時代に兄と)だった事が有るが、容易に見分けは付く)ので、コレは本当に偶然…と云う事で済ませたのだろう
 ただ、この二人が瓜二つ…つまり、法眼琢也の血筋が色濃く入っている、と、思える事態なのが結構重要な意味を持った
 と、云うのも映像化作品では『弥生が猛蔵に強姦され、そのまま半妾の様な扱いがあった過去』…と云うのが徳兵衛が弥生を脅迫するネタだった訳だが、此処は原作を少々アレンジしている程度で事実関係は近いのだ

 何処がアレンジかと云えば、弥生は当時嫌々だったか…と云えば、ソコまでではなかったような過去らしい
 弥生の母、鶴子は弥生を生んで直ぐに夫を亡くし、兄:鉄馬の云い付けも有り、猛蔵と再婚したが、そんな境遇の鶴子はナニを云ってもやっても受身の、当時で云う『日本の妻』の典型だったらしい
 いくら美しくても、コレでは欲求が満たされない猛蔵が次の相手に選んだのは弥生だったが、こちらは非常に快活に育った事等も有り、ソレナリに相手をしていたらしい
 しかし、年頃になり、琢也と結婚して子を宿すと『自分の生んだ子は琢也の子なのか、猛蔵の子なのか』で悩み、結果として実の子である万里子と更にその子(孫になる)由香利に余り愛情を注げなくなっていたらしい
 ソレを子らは敏感に感じ取り、愛情を貰えなかった子として所謂拗ねた大人になった結果、家柄と財力は高い傲慢な性格の子になった…と云う経緯である
 ただ、同じ『琢也の子』である小雪を見て、由香利は琢也の血筋である…つまりは万里子も琢也の子である…と、確信したのは上巻の事件後、小雪を初めて見てからであり、全ては遅かったのだ

 話は戻るが、冬子の自殺について…冬子が弥生の実子(石坂版)だとか、敏男が弥生の実子(古谷版)だとかが無いのであれば、何故冬子が自殺に至ったか…コレは琢也のポカ…としか云えないだろう
 まぁ軍役に出た訳でなく、空襲で突然死んで仕舞ったのだから、仕方ないと云えなくも無いが、妾を囲っておいて、本妻に対して事後を全く引き継いでいないのが原因である
 昭和初期当時は、重婚は認められていないが妾の存在は半ば公的に認められていた(法律上は、明治中に廃止されたが、風俗としては残った)訳で、しっかりと琢也は弥生に冬子の事を頼むと云って置けば良かったのだ

 チト話を逸らすが『妾』と云う言葉は良く知らずに使っていた事に気付く
 調べると『婚姻した男性が妻以外に囲う、経済的援助を伴う愛人』と云う事であり『対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交する』売春とは『不特定の相手方』と云う点で違い、今でも『妾を囲う』事は刑法的には犯罪の定義に入らない
 また、狭義には『妻も承知しており、社会的に隠された存在では無い』モノであり、妻に隠れて行う不倫とは意味合いが異なるモノの様だ
 つまり『妾を囲う』のは、男の甲斐性(その女性や子供の生活面で不自由させないので)だが、『隠れて不倫』は男の不貞である…と云う違いが有る訳だ
 特に戦中・戦後の時代は男性が少なく、女性が経済的に自立出来ない時代だったので、この様な習慣・風土が幅を利かせていたのだろう
 山内冬子の例で云えば、法眼琢也は妻、弥生に冬子の存在及び子供(冬子の前夫との子である敏男と、琢也との子である小雪)の存在は伝えており、弥生もソレを承知していた関係の様だが、飽くまで琢也が処理する問題として弥生は一切の対応を任されなかった…ソコで琢也が空襲で急死した、と云う状況になった訳だ

 で、住処を空襲で焼け出され、頼るものは琢也のみとなった冬子が法眼家を訪れれば、琢也の訃報は知らされたが、家ではナニも保障せずに門前払い(丁度、事情を聞いていた弥生も地方に出ており、対応は弥生の娘の万里子が行ったのだが、上記の通り万里子は高慢に育った娘である)をされ、自殺…と云う顛末らしい
(子供2人放って自分だけ死ぬのは如何なモノか…とも思うがな)

 そう云う意味では山内兄妹も法眼家に一定以上の恨みは持っていなかったと推測出来る(当然、一定線までは恨んでいたと思うが)
 ただし、由香利は…会う事は出来たが侮辱を受けた…との事なので、事件の発端になる由香利誘拐については、ある意味自業自得だったのではないか、と思われる
 コレも上記『愛情を注がれなかった子(万里子)の子であり、由香利もまた、弥生から愛されなかった子である』事に起因すると思われる…因果応報、とでも云うのだろうか

 で、犯人…と、云っても『何の』犯人か…つまり、この作品では目に見える殺人(上記の通り山内敏男、法眼由香利及び本條直吉、吉沢平次、山内小雪の5人が殺されている)で云えば、上巻2人は相討ちであり、下巻3人は同一犯に因る殺人である
 映像化作品では上巻2人は上記の通り事故死・後追い自殺で、下巻3人はやはり同一犯に因る殺人…であるのだが、この犯人が変わっている
 死んだ由香利と行き場のない小雪を入替える事にしたのは弥生で原作・映像作品共に共通だが、映像化作品ではその後の殺人も弥生の犯行となっており、原作では…滋である
 …滋、この名は前回の記事も含め此処までで殆ど出て来ていない…誰? とも思えるのだが、前回の記事に記した映像作品では、由香利の婚約者(石坂版)又は弥生の現夫(古谷版)で、五十嵐家の一粒種である
 原作では再三の通り20年の時が過ぎているので、上巻の最後に由香利と結婚し、渡米している(下巻では帰国している)のだが、結婚した相手が由香利に『なった』小雪である事を知らされずに20年を過ごした、ある意味可哀相な人でもある

 コレの動機にも絡む事だが、冒頭に記したとおり、この作品での本質は脅迫・恐喝事件であり、被脅迫者が脅迫者に対して行った対応が殺人となった…と云うだけである
 ただ、間抜けな事に殺された本條直吉は脅迫者ではなく、脅迫者に勘違いされた者であるのが、原作での特異性である
 また、吉沢が殺されたのは、元『怒れる海賊たち』皆殺し計画と併せて犯人の八つ当たりに近い状況で、最後の小雪に関しては、事故に近い
(ある意味、全ての終結を悟った小雪が、ドサクサに紛れて滋の拳銃を自分に向けて暴発させる様に組み付いた可能性も有る様だが)

 映像作品での徳兵衛・吉沢は間違いなく弥生を脅迫(石坂版では、吉沢は最初、滋を脅迫したが、今度は滋が弥生を脅迫…ソコで、弥生は吉沢を殺害、滋に罪を着せる行動に出た。古谷版では直接弥生を脅迫した)していたので、動機も判りやすかったのだが、原作では脅迫された滋が脅迫者を勘違いして直吉を殺害した…と云う構図である
 直吉もまぁ…徳兵衛が弥生を脅迫して得た本條会館で会長職にもなったのだから、脅迫者の利益供与を受けた形にはなるのだが、犯行自体は晩年になるまで知らなかった様だし、可哀相な話である

 では、原作での脅迫者は誰か…と云えば、既に名の出ている徳兵衛と、兵頭房太郎である
 …をぃをぃ、此処でまた初見の名前が出て来たぞwww
 そりゃそうだ、この房太郎、映像化作品では出てきていないのだwww
 原作では本條写真館(上巻)の助手として写真術を学んでおり、下巻では独立してヌード写真家としていた人物である
 その伝手で、本條写真館が躍進して本條会館(冠婚葬祭から新婚旅行前の宿泊まで一気に可能とする大会館…映像化作品では徳兵衛の夢に終るが、原作では20年間~ソレ以前から~にも及ぶ恐喝で得た資金を元手に作り上げ、繁盛している)となった下巻時点でもフリーパスで過去の資料館に入っては恐喝の種になる写真を物色出来る立場に居た人物である
 映像作品では、石坂版には本條写真館の助手と云う立場で日夏黙太郎と云う人物(演:草刈正雄)が登場しているが、コレは金田一の助手的立場(原作ではシリーズ数本に登場している多門修と云う人物に当たる)の位置にあり、犯罪とは無縁であるし、古谷版には、そもそも本條写真館に助手など居ない
 コイツが本條写真館に保存してある写真を元に滋を恐喝(コレも、当然だが由香利=小雪を知らないので、由香利と滋の息子、鉄馬は敏男の子である…と、云う事をネタにした)し、滋は写真の出所から直吉を脅迫者と勘違いして殺した…と云う構図である
 まぁ…映像化するにはチト複雑ではあるな

 さてさて、事件後の舞台については原作でも語られていない
 本條写真館…下巻時点では本條会館だが、コレは直吉に息子と娘が居るが、学生であり、事業を継げるとも思えない
 当面は、創始者の血縁と云う事で名ばかりの会長職として生活は出来る程度の褒章は得られるだろうが、法眼家と経済的に切れた本條会館が何処まで存続出来るかは不明である
 法眼家・五十嵐家について云えば、五十嵐家には跡取りが居ない…結局、滋は子を成せなかった(上記の鉄馬は敏男と小雪の息子)のだから、コレは仕方が無い
 五十嵐産業は法眼家の影響を抜けた企業として続くのだろう…しかし、実質この企業を回していた弥生・由香利(小雪)の死亡と滋の逮捕等スキャンダルが続いた訳だ、今まで通りの業績が残せるとは思えない
 法眼家(病院事業)は完全に法眼家の跡取りである鉄馬は医者になる気は無い様だし、病院を潰すか、他者に渡すしかないだろうな…序でに云えば、鉄馬は恋人の家に婿入りし、法眼の家も潰すかも知れない
 法眼滋は、その背景から酌量の余地は有るにしても、3人の人間を殺しているので、実刑は免れないだろうし、出所してもこれ以上血筋を残すことは出来ないと思われる

 で、以前の記事でも書いた通り金田一は渡米後消息不明…と、なっている
 ナンでも横溝氏は生前、金田一は昭和50年に密かに帰国し、余生は日本で送った…と、語った事が有る様だが、当然その辺りは小説にはなっていない
 実際、余生と云っても、ほぼ全財産を現金化し、知人やら施設やらに分配しているのでは、どうにもこうにもなるまい…とは思うのだが
 昭和50年と云えば、オイルショックの影響が冷めずに、まだ不況期だった筈である…金田一はと云えば、63歳にもなっており、金も身寄りも無い60の老人が生きて行けるほど楽な時代は過ぎていると思うのだが

 ナンかネタバレが多過ぎて、もぉどうもこうも無い状態になって仕舞ったが、これから読もうか、と云う人には申し訳ない
 最初からネタバレ多数を明言しているので、ソレを承知で読んだのだ、と勘弁して欲しい
 さて、次回は…ネタが無い(毎度の事だが)
 故に、何を書くかはその時になってかな
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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2015年7月 7日 (火)

八つ墓村、読破(ネタバレ満載)

 と、云う訳で、最近読んでるラノベシリーズを放っぽり出して読み始めた横溝正史の小説である

 先日、古谷一行の金田一耕助シリーズDVDコレクションの購入開始時に寸評を入れた訳だが、その際に『平成27年5月現在で一番多く映像化された横溝作品だが、原作通りに作られた事が1回も無い』旨の記述をしたと思う
 で、その事に興味を持ってブックオフで文庫本を買った訳だが、ソレを読み切ったのだ

 さて、その時の記事から、当時、他のWEBやwikiから仕入れた情報で以下の様に書いたと思う
 この作品は原作小説でも特徴的な部分が大きく2つ有るらしい
・金田一が空気である
・映像化に合わせて登場人物や関係性を省略・簡素化している

 …と、云う事でネタバレ満載でこの辺りを追求して書いて置きたい
 これから読みたい人や映像は…もぉ公開して何年も経ったモノだし、良いよね?
 なお、比較は原作・渥美版('77)・古谷版('78)・豊川版('96)・JET版(漫画:'96)の5作でのモノとなる
 多分、鶴太郎版と稲垣版も見てはいると思うが、覚えてないのだ

 先ず、舞台であるが、基本的に同じ(と思う)
 岡山と鳥取の県境にある寒村…と、原作では書かれているが、どの作品でも寒村と云う意味では全く変わらない(諏訪弁護士の事務所が原作だと神戸だが、渥美版では大阪、古谷版と豊川版、JET版では明記されてなかったかも知れない)

 時代的には、渥美版だけ'70年代に設定されており、これは日本航空とのタイアップの関係で、主人公の職業を空港の航空機誘導員として航空旅客機を映画の大画面に出さねばならなかった故の変更である
 …ってか、何で横溝作品の映画化で航空会社とタイアップしたか、その時点で松竹の気が知れんwww

 主人公;寺田辰弥は豊川版では石鹸工場勤めで、渥美版では上記の通り、空港勤めであり、この2作品では真っ当なサラリーマンである
 原作及び古谷版ではヤミ品を流すブローカーで生計を立てており、JET版では定職についてないと記載されている

 金田一が村に来た切っ掛けも、原作・JET版では最後に語られるが、西屋の頭領:野村荘吉が、その弟:達雄の死に疑問を持ち(ってか、原作ではかなり本気で疑っている人物がいる)、その調査に金田一を呼んでいる形である(つまり、今回の事件とは別件で滞在していた訳だ)
 豊川版では辰弥を探し出した諏訪弁護士が、今回の件にキナ臭いモノを感じ、金田一に調査を依頼すると云うモノである
 渥美版でも、諏訪弁護士からの依頼となっているが、こちらは殆ど諏訪弁護士の個人的な依頼になっている
 即ち、自分の事務所が現場となった殺人事件について、腸内で溶けるカプセルに毒が仕込まれていると云う事で、容疑は晴れたが、このままでは気分が悪い、と、この殺人事件に関しての調査を依頼した…と云う事である
 まぁ一応、依頼に沿って被害者の村に来て調査を始めたら、弁護士事務所の一件を発端にした連続殺人事件に切り替わったので、併せてその調査を…と云う事らしい
 そう云う観点で来ているので、久弥の死亡時も現場に居ないながら死体の司法解剖を岡山県警に進言したりと出来たのだろう
 しかし、結局やったのは事件がほぼ終了してから村人に事件の解説をした事だけであった…以前の発言や後述もするが、この映画だと最後に多治見邸宅が全焼するが、その後、ドサクサに紛れて村からは消えており、ラストに諏訪弁護士事務所で辰弥に実父の偽情報を流したと云って〆る
(まぁ、この作品では辰弥の実父は登場すらせず、外国で成功し、帰国していた癖に村での事件に一切関わらず(劇中、TVで村での連続殺人事件が報道されているにも拘らず、だ)完全に無視を決め込んでいる…この親父も何処か可笑しいのだが)
 まぁ、クライマックスで真犯人の手掛かりを残した春代も、真犯人も鍾乳洞内で死んだので、金田一が村人に解説しないと、辰弥が鍾乳洞から出たところで逮捕or嬲り殺しだったかも知れんので、その意味では一応辰弥の助けにはなったのかも知れんが
 最後になったが、古谷版が一番酷く、本当に通りすがりなのである…村名に惹かれて…と云う事から、その村の謂れなんかも宿で聞き歩く…と、視点が辰弥でなく、金田一だからか、説明してくれる人が居ない所為で非常に無神経な言動が目に付く

 次に典子…本作の真のヒロインについてである
 原作では、登場時こそ月足らずで誕生した、少々知恵足らずで面相も余り芳しくない旨の書き方がされているが、中盤に辰弥に告白(一目惚れらしい)をした辺りから、行動力もあり、常に辰弥をサポートしながらも何故か物語の転機には必ず脇に居るポジションを取り、容姿も綺麗になる(辰弥の一人称で書かれるので、辰弥の心象が変われば一気に美化される…と云う事も有るのだろう、一応、原作では周囲も最近綺麗になったと話を聞く…とあるが、何処までやら)離れ技を見せ、最後には辰弥の子を身篭って結婚…と、云うサクセスストーリーを歩む娘だが、映像化作品では省略される事が多い
 渥美版・古谷版では省略、豊川版では登場するが然したる活躍も無く、JET版でも辰弥のサポート自体はするが、特に恋仲になる等の進展は無い

 次に死亡者数であるが、原作が井川 丑松・田治見 久弥・洪禅(和尚)・梅幸(尼)・妙蓮(濃茶の尼)・久野 恒実・田治見 小梅・田治見 春代の8人が犯人の手によって殺され、森 美也子が鍾乳洞で抵抗された際に負った傷が元で中毒死、片岡 吉蔵と周(西屋の若頭)が辰弥を追い詰めた際に起きた落盤に拠る事故死となるが、渥美版では田治見 小梅が最後に田治見家が炎上した際に家の中に一人仏壇に向かっており、多分焼死したと思われ、古谷版では里村 慎太郎も殺害され、英泉(古谷版では富三造となっている)が犯人と刺し違えている
 豊川版では田治見 小竹も犯人に殺害されている
 片岡 吉蔵と周に関しては、ソモソモ映像化の際に殆ど省略されており、森 美也子に関しては渥美版では落盤による事故死、古谷版・JET版では鍾乳洞内で相打ち(相手は両作品で違うが)となり、豊川版では服毒自殺である

 各作品で特筆すべき点は其々以下の通り
 渥美版は以前の記事にも書いた通り犯人が犯行発覚後に妖怪化して事故死、多治見家邸宅も炎上し縁者は全員死亡している事
 古谷版では全ての事件解決の数ヶ月後に近くの河が氾濫し、村全部が流され、村人は一人も生き残っていない…ドコロか、主人公辰弥も丁度、尼子の財宝を取りに来ていた最中だったのか、一緒に流されて命を落としている
 豊川版では辰弥は多治見の遺産は放棄した状態で元の生活に帰り、里村の兄妹も神戸に帰る事で事実上、多治見家は無くなる
 JET版は尼子の財宝について発見されずに解決し、辰弥は母親の思い出に浸る為に時折来ようと決心する所で話を終える

 次に犯人だが…まぁ此処までの文章を読んでいれば、誰が犯人かは判ると思うが、取り敢えず名は伏せる
 流石にコレは全作品共通である…(まぁ石坂版獄門島の様に色々な事情で犯人を原作から変更する事も有るが、取り敢えず本作では無い様だ)
 ただし、古谷版だけ、諏訪弁護士が共犯・一部実行犯として逮捕される展開になっている
 原作では、財宝を見つけた辰弥・典子夫妻の財宝所有権について尽力し、最後まで辰弥の味方で終わる人だし、渥美版と豊川版では金田一を呼びつける元の依頼人にもなっている訳だが…作品が変わると立ち位置が一気に変わるキャラの最右翼である

 多治見家については、原作では要蔵の血縁は死に絶え、分家筋の慎太郎が継ぐが、慎太郎は結婚せずに辰弥の次男に次を任せたい(長男は当然、寺田:辰弥の養父の姓を継がせる)と云う申し出が有り、決着するが、映像作品では結構まちまちである
 渥美版では血筋は絶え、戸籍上は辰弥が残るが家屋等は全焼、結局土地のみが残る形になるが、達也が相続したと云う話は残らない
 古谷版では再三になるが、村ごと濁流に飲まれてるので、血筋も財産も何も残らない
 豊川版では結局誰も継がなかったんぢゃないかな? 辰弥は元の生活に戻り、慎太郎・典子は神戸に出る…と云う事で、他の血筋は全て絶えた訳だし…宙に浮いた財産はどうなったか、よく覚えてない
 JET版では、慎太郎が継ぐ形で落ち着く…が、一応辰弥にもソレナリの分与を行っているので、円満に解決している

 で、物語の視点だが、原作では上記の通り辰弥の一人称で書かれている
 渥美版・豊川版・JET版もソレに準じており、要所ゝでしか金田一が登場しない…が、古谷版だけ、辰弥と金田一が両方主役級に登場している…シリーズ物で2話目以降、アバンで『僕、金田一耕助です…』から始まる前回までの簡単な粗筋紹介をするのが、このシリーズの鉄則なので、金田一が蚊帳の外だと問題が有ったのだと思う

 あと、森 美也子が尼子の血を引いている…と云う設定については、渥美版と豊川版でその様な語られ方をしているが、他の作品では原作を含め、そんな事は一切書かれていない
 併せて云えば、渥美版では辰弥の父親(母親の鶴子は物語の設定上、村の出身で無ければ話が成り立たないからだろう)の血筋も遡ると尼子の地盤に辿り着く…と、判明した所で金田一が調査を辞めた、と云っている…此処までオカルトにしたなら、しっかりオカルトにすれば良いのに…とも思うが、まぁ可能性と云う事で判断を視聴者に委ねる事でオカルトにしてるのかも知れん

 最後に謎解きだが、金田一も確かに謎を解いていた…が、原作では本当に『何もしていない』のだ
 原作では上記の通り、別件の調査で呼ばれたが、調査を断ろうとしていた(物証が出ない事がほぼ確定していたので、立証不可能と判断した)所に達雄殺しとほぼ同じ手口の連続殺人が起きた事で事件捜査に乗り出すが、犯人をほぼ確定していた(妙蓮(濃茶の尼)殺害辺りで…既に5人も死んだ後ではあるが、時間の進み方から云えば、辰弥が村に来て数日後の話である…その後の展開に結構時間が掛かっているので、日程的にはかなり初期段階と云える)にも関わらず、物証が無いから泳がせて次の殺人を未然に防ぐ・現行犯で逮捕…と、考えて泳がせておいたら出し抜かれて犯行は続くわ、辰弥は吊し上げ寸前になるわ(と、云うか丁度良く落盤事故が起きなければ殺されていた)、本当にナニしに来てんだ、と云った状態である
 村人の暴動を抑えるのに警察権力は役に立たず、説得したのは結局長英(死ななかった方の和尚)である
 まぁ病床に伏していた(それ以前の仏事には和尚ではなく、副住職扱いの英泉が執り行っていた)長英和尚に事のあらましを告げ、村人の説得を依頼したのが金田一なので、全くの役立たずではなかったが、事件に対しては、自分の推理を磯川警部に相談してれば、警察の人海戦術で犯行の防止・現行犯逮捕は出来てた(まぁ残り3人を絶対に助けられたか…と云えば微妙だが)可能性は少なくないと思う
 その所為で、最後の謎解きってか解説の場では、磯川警部の苦い顔が何回出た事やら…
 金田一の推理スタイルが『秘密主義で、警察から情報は仕入れて推理する癖に、警察に推理を披露しない』と云う、酷い云い方をすれば警察に寄生してるだけの推理ヲタクなので、仕方が無いと云えばそうなのだが…
 更に、金田一作品では、謎解きの後、犯人が自殺する事も多く、一部では金田一がソレをも見越してる癖に見逃しているに近い描写もされており、一部では警察(等々力警部)はある意味ソレを黙認している節もあるとか…殺人防御率率が他の創作に出てくる名探偵に比べて著しく低いのも、この辺りに起因しているとの事である

 最後に小竹婆ぁさんであるが、前述したとおり、渥美版では最後に焼け死に、豊川版では犯人に殺されている
 古谷版では小梅殺害後は全く登場しなくなっており、生きてるだろうケド状況不明のまま終了する(尤も、前述の通り事件後数ヶ月で村全体が流された時に死亡してると思うが)
 では、原作はと云えば、小梅殺害後、一気に腑抜けて仕舞うのだ
 一卵性双生児は片方に重大事が起きるともう片方にも影響がある…と云う様な記述がされるが、それ以前に生まれてから両人とも嫁にも行かない行かず後家で家の内外を取り仕切っていた相方が目の前で惨殺されたのだから、仕方が無いとも云えよう
 ちなみにJET版でも腑抜けた小竹婆ぁさんが1コマだけ描かれている

 まぁ…取り敢えず、筋が似通ってる癖に違う5つの話を全てネタバラシしながら書いているので、支離滅裂になってる部分も有るかも知れんが、勘弁して欲しい
 最後に、原作をそのまま映像化出来たら見たいか…と云えば、鍾乳洞探索の部分(特に久野医師の遺体発見の下り)は編集で短くしても良い気がする…まぁソレだけ広大で蟻の巣の様な迷路になってる、と云う事を云いたかったのかも知れんが、読んでて疲れる部分でもあった
 まぁ昭和前~中期の作家だけに、表現も少々古く、読み易くは無かったのも事実であるが

 取り敢えず、思い付いた所は一気に書き上げた積もりであるが、何か書きそびれが有ったかな…
 まぁ個人的な解釈・感想と云う事で流して欲しい

 次回はナニ書くかな
 ネタは常時探しているので、適当に見繕う積もりである
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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