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2017年6月20日 (火)

金田一耕助シリーズ雑談(犬神家事件年代篇:ネタバレそれなり)

 と、云う訳で週末はサンクリに参加した訳だが、知り合いへの挨拶と飼主との取引、そして私を介した発注者への取引だけしかしなかったので、実質1時間と会場に居なかった事もあり、ネタにならない
 雨予報(ってか、実際に帰りの駅から自宅までは降られたし)の関係で、都電を利用したから自転車関係での話も無いし
 昼食は、折角東池袋だから…と、大勝軒でうっかり『大盛り』を頼んだらナンかヤヴァいのが来て、ナンとか食い切ったけど、汁は残して仕舞ったとか…まぁ多少脚色すれば適当な文章にはなりそうだが、その辺は打棄って、先日ネタにし掛けた事を少々纏めてみようかと思う

 最近、ウチのブログで読まれてるのが、また金田一シリーズの原作・映像作品等の比較関係である
 未だに、このシリーズのファンが多い(私だって古谷一行・石坂浩二シリーズからスタートして、原作はまだ数える位しか読んでない俄かなのだが)のは、やはり不朽の名作達なのだろうな…と思う

 で、現時点私が読んだ原作小説は以下の通り(順不同)
・八つ墓村
・本陣殺人事件
・獄門島
・悪魔が来りて笛を吹く
・犬神家の一族(現在読書中)
・夜歩く
・女王蜂
・悪魔の手毬歌
・悪霊島
・病院坂の首縊りの家

 以上が長編で、中短編が以下になる
・車井戸はなぜ軋る
・黒猫亭事件
・湖泥
・貸しボート十三号
・堕ちたる天女

 と、云う事で長編10作と中短編5作の計15作を読んだ事になる
 とある資料(NET他、資料本で確認)に因ると、金田一シリーズの作品は全部で77作(病院坂~の元ネタになった病院横町の~とか、首の元ネタになった悪霊とか、そう云うのは外しての数)有るとの事なので、まだ2割にすら届いてない訳で、本当に俄かも良い所だと思う

 ただ、今、上記の通り犬神家~を読んでいるのだが、フと気付く事も有る
 金田一シリーズは作中に事件が起きた時期を明記しているモノとボカしているモノが有り、読者はボカしている年代を独自の観点で推測して資料化している人が多い
 明記している作品の例としては
・本陣殺人事件(昭和12年11月)
・獄門島(昭和21年9~10月)
・悪魔が来りて笛を吹く(昭和22年9~10月)

 ボカしてる作品の例として
・八つ墓村(昭和2X年5~9月)
・犬神家の一族(昭和2X年10~12月)
 昭和2X年が多いのは、金田一が活躍したのが昭和20~30年代と云う事で、その辺が一番妥当だろうとの配慮だと思うのだが、例えば八つ墓村では表面上昭和2X年となっているが、主人公の事件当時の年齢と生年から、昭和23年と推測される
 同様に、犬神家でも佐清の年齢と生年等から、昭和24年では無いか、と云う推測が成り立つのだが…
 此処に一つの議論が起きている(やっと本題…)

 と、云うのは法律の問題なのだが、この物語は全て『那須に拠点を置き、政財界にも「その人有り」とされた犬神製糸創始者、犬神佐兵衛が残した遺言状』に端を発している
 ネタバレって程ネタバレでも無いが、この遺言状、認知した実子3人のウチから伴侶を選ぶ事を条件に、全財産を『自身の立身出世の原動力となった恩人の遺児』に渡す(詳細は他にも有るが、大きくはコレ)と云う内容である

 しかし、昭和22年に憲法が改正・施行され、この憲法の下で新しく成立した民法では、遺留分制度と云うモノが新しく設定された
 コレは、故人の意志がどうあっても、相続人に対して一定の割合で財産相続を請求出来る権利を認めた制度である
 この一定割合とは、相続人が直系尊属のみの場合は被相続人の財産の1/3を、そうでない場合は1/2と云う形で制定されており、遺言状ではコレに上乗せする形で特定の相続人に残額を相続させる、又は相続人に設定されていない人間に相続させる意思を示す形になる

 この場合、直系(佐兵衛は生涯妻を持たなかったので、コレは該当する)尊属(佐兵衛は親を知らず、子にのみ相続資格があるので、コレには該当しない)のみが相続人…と云う条件には合致しないので、相続人は全員で佐兵衛の財産の1/2を受け取る権利が発生する
 更に被相続人の血族は1.被相続人の子、2.被相続人の直系尊属、3.被相続人の兄弟姉妹と決められており、被相続人の孫や子の配偶者は被相続人の意志が働かない限り相続する事はない
 故に、松子・竹子・梅子の3人が佐兵衛の財産の2/1を等分して相続する権利を持ち、其々1/6を受け取れる計算になる
(まぁ此処で相応の相続税が発生するし、ソレを子供達(佐清・佐武・佐智及び小夜子)に相続・贈与するとなると、ソコでもまた相続税・贈与税が掛かるので、結構な税金を納める羽目になるのだが…)

 …しかし、佐兵衛の遺言状が公開された際に、異を唱えた遺族に対して犬神家顧問弁護士は『(この遺言状は)法的に全ての条件を具備している』『異議があって法廷で争おうとなさるならば、それも御勝手ですが、それはおそらくあなたがたの敗訴となっておわるでしょう』と明確に親族全員に宣言している
 つまり、日本国憲法施行前の法律で成立する話であると読み取れる

 さて、物語の月日についてはシッカリ明記が有り、金田一が那須に到着したのが10月18日であり、親族が全員那須に揃うのが11月1日深夜、遺言状の公開が翌日と明記されている
 しかし、佐兵衛の死亡は同年2月18日で、当然、遺言状の作成はそれ以前である事から、遺言状の法的効力と新憲法で保障される遺留分はどちらが優位であるか…調べると、載ってるモンだねぇwww
 このサイトで紹介されているが、被相続人の死亡時期で適用法が変わると云う事らしい
 つまり、佐兵衛の死亡が2月で確定している場合、この物語は昭和22年以前であれば良い…と云う事になる

 さて、此処で金田一耕助本人の歴史を紐解くと、昭和12年の本陣~にてデビュー(この作品での紹介では、既にソレナリの活躍をしている一端の探偵であると明記されているが)しており、その後『獄門島』の事件まで戦争に行っている事になっている
 …まぁ獄門島の直前に『百日紅の下にて』と云う謎解きを一つしているのが後から発表されたのだが、コレは事件の現場に居たのではなく、亡き戦友の遺言によって出向いた地で、話を聞くだけ聞いた後に顛末を推理して披露しただけであり、モノの数時間程度の時間で済んだ話で有るが
 で、その獄門島の事件では昭和21年の9月に金田一が島に渡り、第一の殺人が10月5日、その後も2日に渡って別の殺人が3件続き、解決はその翌々日、詰まり10月9日になる…更に、この作品の途中で金田一が島を離れる記述は無く、途中で他所の事件を掛け持ったと云う事も有り得ない
 獄門島を解決して直ぐに那須に来る様ならば可能な日程ではあるのだが…黒猫亭事件に記載されているのだが、獄門島の直後に岡山県の農村に疎開中であったY先生に会いに行き、3日間逗留している
 その後、第2のパトロンになる風間俊六と再会し、彼のニ号が経営している割烹『松月』に転がり込んだ事が『悪魔が来りて~』に記載されている
 まぁコレもY先生宅からの上京列車で風間に会う訳だから、日程を完全に切り詰めれば不可能ではないだろう…
(10月9日の内に獄門島を出てY先生宅に到着、12日まで世話になり、その晩の列車で風間に出会う…その侭意気投合して松月に迎えられて一息付いたら手紙を受領、16~17日に東京を出れば18日に那須には着ける)
 しかし、犬神家での那須への呼び立ては手紙な訳で…直前まで住所不定だった金田一に手紙で依頼が来る事は考えにくい
 と、云う事で、昭和21年の10月、又はソレ以前に犬神家の事件は有り得ない事になる

 結論として、犬神家は昭和22年の事件と云わざるを得ない
 記載した登場人物の年齢については『あ、仕舞った、誤記があった』で済むが、此処での法適用は物語の根幹に有り、新法適用であったとなると、松竹梅の三姉妹が訴訟を起こした場合、少なくとも佐兵衛の財産の半分は其々に分配される所まで勝ち取れるのだから…
 ソレでも故人の恩人筋とは云え、血縁では無い娘に残りを持って行かれる事を是としない…と云う動機は有るにせよ、計5人の死者を出す事件にまでなるか…と云うと少々考えるモノがあるのも事実である
 まぁ可能性として、犬神家顧問弁護士である古舘氏が新法適用に気付かないボンクラで、血族全てがそのボンクラに云い包められた…と云う喜劇である可能性も無くはないが、流石に大企業の顧問弁護士がソレでは最初からその企業が財を成せる筈もなく…

 取り敢えず、今回はソンな感じで個人的な帰結であるが、結論を出してみた
 まぁ一家言ある人なら、異論は多分出てくると思う
 私は、まだ流し見程度で有るが(Kindleでは購入済)、『殺人鬼』に収録されている『黒蘭姫』が昭和22年であると推測される(これも11月とは明記しているが、年については未記載である…ちなみに、犬神家は結構長い時間掛けて解決しており、発端は上記10月の金田一登場だが、解決は12月に入っての話になる)ので、昭和22年では有り得ない…と云う説も有るし

 こんなネタが後2つ位は雑談として出せる程度には読めた訳だが…
 まぁ本格的な研究者も居る気がするし、その辺は自己満足の範囲ではあるのだが…

 今回も(私にしては)若干短いが、今後『犬神家の一族』の比較検討(取り敢えず、映像作品は石坂版('76年・'06年版)、古谷版(調べたら2時間版って無いな、連ドラ版のみ)、鶴太郎版、稲垣版の5作+漫画版(JET著)と原作の7作比較が出来る状況にある)する時の備忘録と云った意味でも残して置こうか、と云う意味もあるので、御了承願いたい

 次回は…すごろくの劇かなぁ…翌日の日曜はSHERPAの整備が有ってソレナリに忙しい日々を過ごす事になるのだが…
 まぁナニかネタは探すけどねwww
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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コメント

どもです。

うーん、これはまた面白い着目点ですねえ。
私も最初に「犬神家の一族」を読んだときに(中坊の頃だよ…)、こんな無茶な遺言ていいのかいな?と不思議だったです。まあ昭和20年代の日本なんてさすがに想像できるものじゃないですから、当時はよかったんだろうなあとか思っていました。

試しにググってみると「犬神家の一族 遺言」で「有効」という候補が出るあたり、読者には引っかかる問題ではあるみたいですね。
一つ選んでみたサイトでは新民法下でも「ある程度は有効?」みたいなことを言っていましたが、別の人がそれに反論しているようで、専門家ならぬ私には細かいことはよくわかりませんでした。
ただどっちにしろ、旧民法下でも遺留分制度はあったそうで結局松茸氏の仰る通りこの事件の一番の戦犯はボンクラな弁護士で「戒告か業務停止が相当」だそうです。

もう一つ。
たしか「悪魔が来たりて笛を吹く」に、調査のため遠距離に出かける金田一が、客というより荷物のような状態で列車に詰め込まれて死にそうな思いをしている場面があったと思います。終戦後の交通事情はものすごいものがあったそうで、すし詰めを通り越してあふれ出した乗客が必死に列車にしがみついている、まるでインドかアフリカの鉄道のような昔の写真を見たことがあります。かかる時間も今の鈍行よりはるかに長くかかったろうし、よくあんな時代に岡山やら長野やら遠くまで行ったりしたよなあ。>金田一
そう考えると松茸さんの推定のように、そんなに早くあれこれ遠出が住んで次々と事件にかかわったとは思えません。やはり犬神家事件は22年以降じゃないかと思います。

余談ですが、横溝先生自身は極度の閉所恐怖症で泥酔してからでないと電車にものれなかったとか聞きました。金田一がぐーたらな割にフットワークが軽いのは作者の裏返しだったんでしょうか。

でわでわ。

投稿: ahiru | 2017年6月28日 (水) 21時19分

Shot>あひる提督
 コメント感謝です

 いや、チト読んでて気になったもので…
 貴方が仰る通り、こんな遺言認められないよねぇ…が最初の疑問で、調べると、戦前までは遺産は『嫡男総取り』で、嫡男の温情で下の兄弟や婚前の姉妹に分配を許した…と云う風習であった、と云う話を聞いたので、では、その境目は…と調べる気になった訳です

 遺言の有効性と云う意味では、多分、色々ケースバイケースの例も有るのではないかと思います
(例えば、生前、被相続者の財産を著しく損なう事例(故意又は過失で、事故では無く)を起こしていた相続者の相続割合を減じる遺言が有った場合には認められたりしないかなぁ…とか、私も専門家では無いのでナンとも云えませんが)

 古舘さん評価駄々下がりwww
 まぁハッキリキッパリ『訴訟しても絶対負ける』と云い切ってますしねぇwww

 悪魔が来りて~も読みました、はい、確か神戸に『元子爵の帝銀堂事件当時の足取り確認』に行った時の描写ですね
 コレも実は他所での影響がある話で、この話はハッキリキッパリ昭和22年と明記されています
 コレは昭和22年5月の貴族(華族)制度廃止に絡んだ話になっているので、明記する必要が有ったのでしょうけど、兎に角、昭和22年の9月末から関わった事件で、神戸には10月に出向いてるんですが、その時に神戸(兵庫)まで来ているのに挨拶にも行けずに…と詫びる手紙を久保銀造(金田一の第一のパトロン)と磯川警部(岡山県警警部)に送ってるんです
 つまり、昭和22年10月には明確に『岡山には行ってない』事が判ってる訳で…コレも今度別のネタに用意してあります

 さて、横溝御大の閉所恐怖症と云う話は何処かで聞いた気がします…私の亡父もその気が若干有り、電車や自動車はソコまで嫌がりませんでしたが、オートロックのホテル部屋は嫌がりましたね…バルコニーが有るので、外の空気は吸えるのですが、取り敢えず『建物外に出れない(内鍵ですから、当然出れますwww)』のが嫌なのだそうで…まぁ人の性分ですから、そうでない人には理解の範疇外なのでしょう
 話を戻して金田一耕助は、岡山と東京が中心(犬神家の様に他の街にも行ってますが)で活躍しているイメージが強いのですがねぇ…映画では『病院坂~(石坂版)』で南部鉄の風鈴を調べに岩手だか青森だか行ってますしね
 確かに日本全国何処にでも行く時は行くイメージが有りますね

 では、また^^

投稿: 毘沙門天松茸 | 2017年6月29日 (木) 12時01分

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