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2016年1月31日 - 2016年2月6日の記事

2016年2月 2日 (火)

病院坂の首縊りの家(ネタバレ多数)

 昨年から買い揃えている朝日新聞出版社の隔週刊冊子『横溝正史&金田一耕助シリーズDVDコレクション』
 昨年一杯で週1ドラマだった『横溝正史シリーズ』『横溝正史シリーズⅡ』の収録が完了し、今年から単発2時間ドラマシリーズ『名探偵・金田一耕助シリーズ』の収録となった

 で、1月5日と云う第1火曜から出版された24号は『病院坂の首縊りの家』が収録されている
 金田一耕助最後の事件として横溝FAN・金田一FANには馴染みの深い作品であるが、このドラマシリーズでは16作目…このドラマシリーズが2時間モノになって全32作だったと思うので、丁度半分での作品と云う立ち位置になっている

 以降はネタバレになるので注意願いたい
 ちなみに、私は以下で紹介する映像化作品(石坂版・古谷版)は両方視聴しているが、原作小説は先日ブックオフで見付けたので買ってはいるが、未だ序盤部分しか読んでいない事を予め記しておく
 故に、原作に関しての突っ込みは有り難く受ける
 また、データ的な所はwikiを参照して記載しているので、更に正しい情報が有れば突っ込んで欲しい

 さて、この作品は上記の通り『金田一耕助最後の作品』な訳だが、ナニが最後かと云うと、この事件解決後に金田一は単身渡米し、その後は消息不明となったと記述されているからだ
 横溝氏はその後、金田一作品として『悪霊島』を執筆しており、金田一を絶筆した訳では無い
 ただ、時系列として、悪霊島は昭和42年に起きた事件の話であり、病院坂は昭和48年に『解決した』話である
 コレも有名な話だが、病院坂は事件の勃発が昭和28年で、その事件も金田一は調査するが解決に至らず、当時は殺人に時効が設定されており、15年で成立した訳だが、昭和48年に関連したと思われる事件が勃発し、再度調査が開始されて事件の全容が明らかにされた…と云う展開である

 文庫本でも上下巻に分かれており、横溝作品最長の(金田一・由利先生・時代物等問わず。他に上下巻に分冊されているのが悪霊島だけだが、悪霊島が347+346=693p、病院坂が367+405=772pである…更に調べると雑誌掲載時から約200pの削除がされて文庫化されているとの事で、そうすると原文は約970pの超長編となる)作品である
 で、今現在で映像化された作品は1979年の市川崑監督の石坂浩二版と1992年の今回DVDに収録された古谷一行版の2回だけである

 まぁね…上記に有る通り、超長編作品である事、最初の事件勃発から解決までに20年と云う歳月が流れ、途中時効を含んでいる事、『とある1つの事項について、複数の人間から時代・世代を渡って脅迫され続けた』と云う異常性が事件の中心である事等、映像化するには非常に面倒臭い作品である事は間違いない

 先日購入した金田一耕助映像読本(洋泉社MOOK映画秘宝EX)では後発の古谷版を『原作の映像化と云うより石坂版をベースにした』的な評価がされている
 石坂版が劇場作品なので139分、古谷版はCM込みで2時間番組…と云う事で約93分(其々のDVDパケの記載から)程度の長さである
 当然、原作を忠実に作ることは不可能で、監督・脚本担当の人が作品中の重要箇所をピックアップして映像作品を作る事になる訳だから、流石に事件の中心を外す訳にも行かずに似たような展開になったのだと思うのだが…

 取り敢えず、両作の共通点は以下の通り
・山内敏男が法眼由香利を誘拐、法眼病院跡で結婚写真を撮影
 (撮影は本條写真館の息子・直吉)
  →撮影後に弾みで由香利が事故死
   →敏男が自殺、敏男の義妹・小雪に敏男が『自身の生首切断・法眼病院跡に風鈴の様に吊るす事』を遺言
    →小雪が法眼家当主・弥生に助力を依頼、生首風鈴事件が完遂
     以降、小雪が由香利として生活する
  (由香利と小雪は瓜二つの容貌であった(映像作品では、二役))

・直吉、金田一が結婚写真の被写体について調査を依頼
  →花嫁は由香利では無いか、と推測

・生首風鈴を直吉が発見(この時には金田一も同行)
  →事件現場で弥生から由香利の帰宅及び写真の被写体が由香利では無い旨証言

・捜査が難航しているうちに、小雪からの自白文書が警察に郵送
  →小雪及び敏男の首から下の遺体の捜索になり、警察の規模縮小

・アングリーパイレーツのメンバー、吉沢が由香利=小雪を看破
  →コレをネタに弥生を恐喝
   →弥生に殺害される

・弥生が少女時代に義父・五十嵐猛蔵に強姦されており、証拠写真を直吉の父・徳兵衛が撮影していた
  →コレをネタに徳兵衛が弥生を恐喝
   →徳兵衛が弥生に殺害される

・事件の真相が暴かれた後、隔離されていた弥生の母、千鶴が死亡
  →その混乱に乗じて弥生が逃亡、法眼病院跡で自殺
   →事件の真相解明後、金田一が弥生の強姦写真の乾板を廃棄
    (地面に叩きつけて割る)

 取り敢えず、大きな所はコンなモンかな…原作を詳細に知らないので、概要を綴った他者のブログ等で推測する限りだが、原作から大きく外れている部分も若干有る感じだが、まぁ生首風鈴事件を中心に書く場合は、コレを無理なく発生させる為に、この程度の変更は仕方が無いのではないか…と、思う
 ただ、原作の粗筋を垣間見るに、確かに人も数人死んでいるのだが、この事件の中心は上記の通り『脅迫・恐喝事件』の様だ
 結果的に人が死んでいるのだが、その根本に有るのは恐喝事件に思えてならない…しかし、映像作品でソレを中心に描くと非常に地味になる事は間違いなく、こう(恐喝等は殺人の動機の一つである形に)せざるを得なかったのではないか、と思う

 で、弥生が猛蔵に強姦される辺りは、石坂版・古谷版では共通しているが、原作の概要では確認できなかった…もしかすると、恐喝の内容は由香利=小雪の点だけかも知れない
 ただ、此処で映像化作品2作での一番の違いが生まれる

 弥生が猛蔵に強姦され妊娠するが、出産した子が石坂版では山内冬子(法眼琢也(弥生の夫)の妾)であり、敏男は冬子が琢也の妾になる前に結婚していた際(夫と死別して琢也の妾になった)、子が出来なかったとして受けた継子である…弥生と冬子の親子関係が判り、冬子は弥生に親子の名乗りを交わしに法眼家に行くが、由香利(冬子の異父妹になる)に悪し様に追い返され、失意のうちに法眼病院跡で首を縊る

 対して古谷版では弥生が産み落とした子が敏男であり、冬子は知らずに敏男を継子として受け、後でその事に気付き法眼家に報告に行った際、由香利に悪し様に罵られて何も告げずに法眼家を出て法眼病院跡で首を縊る…更に、弥生は琢也と結婚後も猛蔵に犯され続けた経緯が有り、由香利も猛蔵の子である可能性が抜け切らなかった旨の台詞も有る

 原作でも事件の数年前に山内冬子が法眼病院跡で首を縊る事件は起きているのだが、その原因が概要に載っていなかったので原作を読まなければ判らず、現時点で私は知らない…此処も結構重要な相違点なのかも知れない

 この違いはどんな意味が有るか、と云うと結構大きな意味が出てくる
 山内家の親子関係を書くと、山内なる冬子の夫は結局、子を成せなかった事は共通した話になるのだが、山内家(と云うか冬子)と法眼家の血縁関係が事件の意味を結構大きく変える

 石坂版では、冬子が弥生の子であるのだから、冬子と由香利が姉妹となり、小雪は由香利の姪と云う血縁になる
 また、小雪は冬子と琢也の子であり、由香利が弥生と琢也の子であるならば、小雪と由香利は異母姉妹と云う関係も成立する

 古谷版では、継子として貰われた敏男が弥生と猛蔵の子である…つまり、敏男と由香利は異父兄妹、或いは由香利も猛蔵の子である可能性が否定出来ず、その場合は完全に両親の同じ兄妹と云う事になる

 実は、原作小説では家系図が違っており、そもそも由香利は弥生の孫(弥生の娘夫婦…と云う存在が、石坂版・古谷版ともに削られている)と云う設定であり、この辺りの血縁関係の考察は全く意味が無くなる
 ただし、当然だが新しい血縁関係の考察が必要になってくるのだが…ソモソモ、上記の通り弥生が猛蔵に強姦されたと云う事項が原作に無い可能性も有るので、原作を絡めた考察は此処で止めておきたい

 話を戻して、小雪が由香利と瓜二つの説明を、石坂版では此処に求めていると思われる
 異母姉妹であり、更に母親が親子関係に有る…遺伝子の3/4は同じ可能性がある事から、瓜二つになった…と云うモノである
 実の兄弟姉妹でも瓜二つになる事は結構稀である事から、ある意味偶然と云えなくも無いが、他人の空似…と云う確率より若干は高いのかも知れない
 古谷版では、由香利と血が繋がってるのは敏男になるのだから、小雪と似るのは完全に他人の空似である

 また、五十嵐滋と云う存在も石坂版・古谷版では違っている
 石坂版では原作と同じ様に由香利の従兄弟として登場し、将来的には由香利と結ばれる(結果、法眼家の跡取りになる)事を望んでいる描写になる
 更には、小雪=由香利のネタで吉沢から恐喝される最初の被害者となるが、このことで逆に入替りが真実であると確信し、自身も弥生を恐喝する立場になる
 ソコで、弥生は吉沢を殺害し、滋にその罪を着せるトリックを実行する展開になった
 真犯人が判明後には当然釈放されただろうが、弥生恐喝の事実は消えないので、法眼家に迎えられる事は無いだろうと推測される
(まぁ法眼家も生き残りが由香利(小雪)だけになる訳だしな)
 尤も、犯人判明で物語は終っており、後日談は『本條写真館は黙太郎の退職後、呆気なく潰れた』と云う事しか語られてないので、推測の域を出ないのだが

 古谷版では弥生の夫と云う立場で登場し、夫婦愛から徳兵衛殺しの罪を着ようとする
 こちらも後日談は語られていないが、犯人判明後には犯人詐称の罪で若干の罰を受けるだけに止まっただろうと推測される

 古谷版では、弥生は少女時代に猛蔵に強姦され敏男を産んで里子に出し、その後法眼琢也と結婚するが死別、更に五十嵐滋と結婚している事になる
 何故にこんなに結婚が多くなるか…と云えば、法眼家と云う代々病院を継いで来た家系を守る為…と云う事になるのだろうか
 琢也との間に由香利が出来てはいたが、女性であり、男子を嘱望されたのではないか、と云う事なら納得も出来る
 前述の通り、原作では弥生と由香利の間にもう一世代『弥生の娘で由香利の母』の夫婦が有るので、弥生がソコまで結婚を繰り返す形にはならない訳だが…20年分の時間を短縮する為には仕方の無い措置なのだろう

 此処で、一世代飛ばした事は石坂版でも矛盾…と云うか妙な所を生んでいる
 琢也は知らずにとは云え母娘を正妻・妾としている訳で、幾ら弥生の少女時代に孕まされた子と云っても当然十数年の年齢差がある筈で…で、弥生が産んだ娘と冬子が生んだ娘は、容貌だけでなく歳まで同じ(詰まり、ほぼ同時期に母娘両方の相手をしていたって事で)…って琢也はドンだけストライクゾーンが広いんだ、とwww

 原作では20年の月日が流れているので、当然その間に結婚したり死別したり家系図の登場人物は一世代分増えるのだが、映像作品ではそうも行かない…登場人物が増え過ぎると視聴者の理解が追い付かなくなって来るし、役者さんは経年を化粧で表現する必要も出来る
(事実、この映像作品でも弥生役の女優は基本、40代後半~50代位の中年女性の役だが、回想シーン(猛蔵の強姦シーン)では10代の少女役もこなさなければならない…化粧を頑張ってるのは判るが、実際非常に無理が有るwww)
 ソコで、ある程度の簡略化も必要になる訳だが、石坂版の家系図・古谷版の家系図…この両作も微妙に違っているので、その把握が一番面倒臭いwww

 映像作品の両方で、法眼家・五十嵐家の家系図は画面に出るが、一瞬であり、DVDで見直す・止める事の出来る今だからシッカリ読む事が出来るが、放映・放送当時にはアレを一瞬見て理解出来る人はほぼ居なかっただろう
 更に、戸籍上の家系図と血縁上の家系図が違って来るので、完全に理解するには、それら家系図を理解出来ないと難しい話になる
 かく云う私も完全には理解出来てないと思うwww

 以前、八つ墓村を原作通りに映像作品が作られた事の無い作品と書いたが、本作も同じく原作通りには作られた事が無いのだ
 まぁ八つ墓村が映画・TVドラマで計9作作られているのに対して、本作は上記の通り石坂版・古谷版の2作だけな訳だが

 事実、戸籍上・血統上の家系図の難解さは有るにしても、殺人トリックそのものは単純で、誰も出来ない筈の殺人(密室等)が起きてるとか、物理的に不可解な遺体が存在してる(一度発見された遺体が消失する等)と云う訳でも無い
 敢えて云うなら生首風鈴が、作品全編でキーワードとなっている南部風鈴の『見立て』になるのかも知れないが、それだけであり、他にも殺人は行われているが特に飾られている訳でもなく、他に映像化された横溝作品の殺人に比べて華が少ない

 そう云った意味では、映像化が難しく、視聴者にも理解させるのが難しい設定ばかりの話で、探偵がトリックを暴いて殺人方法や犯人の逃亡方法を解き明かす話では無いのだ…非常に苦労ばかりで評価が低い作品になりかねない
 だから、映像化も少ないのではないか…もっと云えば、映像化も本来したいと思う人は余程のファンであり、それでも『金田一最後の事件』と云う肩書きが無ければ映像化自体をしないかも知れない

 今回DVDに付属した冊子(本来は冊子の付属がDVDだがwww)を見ると、横溝氏は『クリスティが「カーテン」と云う作品でポアロを寿命で亡くなった事にしているが、横溝氏は金田一を「殺したくは無いが、彼の物語に幕を引きたい」と考えて』事件解決後に渡米・消息不明と云う結末を書きたかった…と記載されている
 有る意味、今回はこの結末が書きたくて書いた小説(更に別の資料からは、一度書き始めて中途で放り出した『病院横町の首縊りの家』を練り直して書いた…と云う事実も記載されている)なのかも知れない
 事実、数々の事件を一緒に追った等々力警部は定年退職した後(下巻の昭和48年時点で)の話となっているし、これ以上老いた金田一を書きたくなかったのは事実だと思う
 上記の通り、その後で書いた金田一小説は悪霊島…病院坂の解決をする6年前の時代を書いているのだし
(老人の6年は体力的には随分違うと思う)
 wiki情報に依ると、金田一の生年は大正2年(1913年)であり、病院坂解決時の昭和48年(1973年)時点で61歳になる筈である
 今でこそ珍しくないが、昭和中期~後期では充分老人の範疇になろう…悪霊島での昭和42年時点では55歳、ナンとか探偵活動も可能な年齢だとは思うが、派手な事は出来ない(尤も、金田一自身、結構な運痴である記載はされているのだが)年齢になっていると思われる
 ちなみに悪霊島より前の時系列で解決した事件は昭和36年2月の蝙蝠男で、この時は49歳…50歳を超えて扱った事件は、悪霊島と本作の2件のみなのだ

 と、云う訳で書いてるウチに本気で興味が沸いたのでブックオフで買ってみた訳だ
 現在読んでいる途中なので、この記事についての薀蓄も含めて改めて書くかも知れない

 と、云う訳で次回更新は…書く事が見付からない
 まぁ毎回そうなのだが、何か見付ける事にしたい
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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