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2016年8月14日 - 2016年8月20日の記事

2016年8月16日 (火)

悪魔の手毬唄(ネタバレ多数:原作・映像4種・漫画)その2

 先週の続きになるが、事件の真相が此処からネタバレになるので、ソレが構わない人だけ読み進めて欲しい



 さて、此処からは更にネタバレが強く、犯人等の事件の核心を比較したい
 先ず犯人…の前に、恩田事件の話に戻る
 実は恩田幾三=青池源治郎であり、当然、恩田を殺害した犯人は別に存在する
 源治郎は亀の湯を継ぐ前、映画『モロッコ』の大ヒットで活弁が不要になった時点でモール製作の副業を故郷の村に斡旋して利ザヤを稼ぐ予定だった(コレが昭和6年)
 更に村の有力者である由良・仁礼2家の嫁・娘に手を出し孕ませている(コレで出来た娘が泰子・文子である)
 また、恩田として村に逗留している際に世話をしてくれていた別所の娘にも手を出しており、孕ませた(コレで出来た娘が千恵子)
 事件の後に由良・仁礼の2家は家の力等も使い、別の親を設定する等して『子が恩田の娘である事』を隠していたが、別所の子だけはソレだけの力も無く、別所千恵子は詐欺師・殺人者の娘と村で迫害されていた過去がある
 また、上記恩田=源治郎の関係上、亀の湯の歌名雄・里子も全て父の同じ異母兄妹と云う関係が成り立つ
 兎に角、副業斡旋を続けていた恩田=源治郎だが、モール元受の倒産で結局利ザヤが得られない事が判り、取り敢えず集まった機械の代金だけ持って別所千恵子の母と逃亡する計画を立てる
(由良・仁礼での乱行は自分を優遇しなかった村に対する意趣返しの意味が強かったが、特に村の有力者でもない別所の娘には確かに愛情を持っていた、と推理された)
 ソコに犯人がやって来て恩田を殺害、判別が付かなくなる様に囲炉裏で顔を焼くと云う隠蔽を図った
(隠蔽には放庵の助言が有った可能性がある)
 この辺の粗筋はどの映像作品でも共通しており、若干の細部に違いは有っても事件の本筋に影響の有る程違いは描かれていない

 さて、恩田=源治郎について、金田一はやはり推理でソコに行き着く
 原作では、周囲の証人から恩田又は源治郎の人となりを調査するに当たり、段々イメージが重なってきたとしている
 石坂版では偶々鏡に蜜柑が1つ映り込み、1つの実体が2つに見える事から閃いた…としているが、尺の関係なのか、説明が雑である…私は何度もこの映画を繰り返し見ているが、この説明については此処の会話だけでは全く理解出来ず、金田一の意気込みばかりが空回りして見えるのだwww
(『謎を解く鍵は蜜柑だったんです』『蜜柑?』『えぇ、詰まり、一人二役』…コレで会話が成立する訳が無いwww)
 古谷版では唄の三羽目を調べに神戸に行ってる最中に里子の殺害を知らされ、ソコから里子も恩田の娘なのでは…と、発展して推理した様だ
 古谷2時間版では、実は恩田=源治郎の確信を持つ根拠が全く描写されずに、イキナリ結論に行き着いているwww
 一番尺が厳しいのがこの作品なのだが、結構酷いwww
 稲垣版でも原作と同じく、調査過程で証人の証言からイメージが重なった旨の説明がある
 JET版でも推理の根拠が明確には記されておらず、源治郎の写真(後述)探しを始めている

 ただ、コレは飽くまでも金田一の心象でしかない
 証拠として2つ提示されるのだが、1つが肉体的特長である『両足の中指が長く、靴下・足袋等はソコから破ける』と云う証言、もう1つが両者の写真照合(所謂首実検)である
 先ず、両足の中指が他人より長い…と云う身体的特徴については、原作では恩田事件当初に気付かれている
 ただし、まだ亀の湯に居た源次郎の親類や妻の『リカ』がその特徴を含めて源治郎の遺体である旨証言しているのだ
 本題の連続殺人の際、別所千恵子の母からも、恩田の身体的特徴として証言があり、磯川の中で『死体は恩田』を確定させる
 ただ、金田一は上記青池の親類筋の証言を忘れておらず『恩田=源治郎』の疑念が強くなる原因にもなった
 また、被害者の足(指の長さについて特徴を確認出来る)現場写真等の資料は岡山県警が空襲で焼けてしまっており、当時検死を担当した村医が趣味で撮っていた写真から確認している
 石坂版では恩田事件当時の証言が無く、中指の写真(村医が所蔵)で恩田事件の被害者が恩田である事が確定するも=源治郎には至らない
 古谷版では源治郎の遺体は当時親類筋及びリカの証言で確定するが、中指の言及は無い
 昭和27年になり、別所母の証言から中指の話になり、死体が恩田である事が判明するが、コレが原作準拠の話に繋がり、恩田=源治郎の疑念が強くなる
 古谷2時間版では石坂版と同じく別所母の証言→村医の写真→恩田の死体確定、しかし=源次郎に至らず、である
 稲垣版では少々可笑しいのだが、恩田事件当時に親類筋から源次郎の遺体である旨の証言は有る
 昭和27年になり、別所母から中指証言が有り、村医の写真で遺体が恩田である事を確定するのだが、恩田事件当時の親類筋の証言が全員の頭からすっぽり抜けて『源治郎が犯人』説のみ有効になる

 その後、金田一は神戸に出て源治郎の写真を求める(閉鎖された寒村では、活弁と云う『芸能界にいる人間』を下に見る風習があり、過去を消す為に青池家では過去の写真は全て処分していた…恩田は写真嫌いで通しており、写真が入手出来なかった…と云う経緯で、事件当時に写真照合が出来なかった、とされている)のだが、原作では活弁としての写真を新聞社から入手する
 コレを恩田と関係した3人の女性に確認して貰う訳だが、由良の嫁である敦子のみ、当時は夫が存命中であった中での不義である事が明るみに出、照会に出て来ない状況であった
 石坂版ではその辺の事はうっちゃってwww照会に参じ、仁礼・別所の母と一緒に写真照会をしている
 古谷版では別所母のみ写真照会を受け、由良敦子は照会を拒否する…しかし、金田一が強引に聞き出し、証言を得る
 古谷2時間版では3人揃った所に等々力が写真を持って登場する
 稲垣版では石坂版と同じく3人揃っての写真照合となる
 JET版でも照合の現場には3人揃っての照合である
 原作では更に過去、由良家が恩田事件で更に没落した際、当時当主の卯太郎が病死し、後家になった敦子と仁礼嘉平が密接になった時期を記している
 その時に、嘉平は放庵から『敦子は卯太郎存命時期に恩田と通じていた』と云う事を教えられ、敦子との関係を絶った…と云う経緯だったが、この話が無くとも狭い村で不義密通の過去が公になったのに写真照合に出て来れる『原作と古谷版以外の全作品』での敦子は少々道徳観念が可笑しいのかも知れない
 上記、嘉平と敦子のエピソードは原作以外に語られていない事も有り、古谷2時間版では文子殺害時には御互いの娘の殺人犯人を御互いだと断定して取っ組み合いに近い喧嘩をするシーンも有った
(他の作品では、原作も含めて文子の兄である勝平と泰子の恋人であった歌名雄が取っ組み合いになっている)

 では、犯人だが…原作・全映像作品・漫画(コレには以前書いたつのだじろう版も含めて)全作品において青池リカで共通している
 当然、恩田事件での犯人もリカである
 動機も基本的に全て共通である
 恩田事件については亭主の浮気(しかも同時に三又…里子の妊娠中と云う意味も含めて4人同時期に相手にしていた訳だ)と、恩田としての詐欺について、更にはモール副業で儲ける事が出来なくなった事でコレに見切りを付けて別所の娘(千恵子の母)と上海に逃げる計画を知ったから…と云うものである
 上記で推理されたとおり、源治郎は別所の娘にだけは愛情を持っていたのである
 で、連続殺人についての動機は、上記の通り泰子・文子・千恵子・里子、そして歌名雄は全て父の同じ兄妹である事が起因している
 歌名雄と泰子が恋仲になり、ソコに仁礼が文子の婿に…と横槍を入れる、ソレら全てが血の繋がった兄妹の間で起きている事であるが、ソレを知るのは恩田事件の真相を知るリカと放庵だけである
 この事を公にすれば恩田事件の犯人も自ずと判ってしまう事もあり、誰にも打ち明けられずに犯行に走った、とされる
 また、JET版でのみ、前回にも書いたが泰子が高慢な性格に設定を変えられて(よくソンな性格の娘と恋仲になったな、歌名雄…)おり、1人赤痣で顔体半分が覆われている里子を蔑む姿がリカの目に入り、殺害動機の一つとなった

 原作では、千恵子殺害の積りが誤って我が子である里子を殺害してしまい、本懐である千恵子を改めて殺そうと、千恵子が故郷に錦を飾る為に建設した、通称『ゆかり御殿』に放火し、ドサクサで犯行を決行、しかし警備している金田一・警察陣に阻まれ逃走中に土手を越えて沼に落ち、溺死している
(コレは読む限り本懐を遂げられずの自殺だったのか、逃走中の事故だったのか、判別がし辛い)
 石坂版では里子を誤って殺した事に気付くと、亀の湯・里子の住んでいた土蔵に千恵子を呼び出し、自白する展開になる
 別の場所で謎解きをしていた金田一と磯川が土蔵にやって来て、更に自白を続けるが、金田一らが放庵の死体確認の為に少し席を外した隙に警察の目を盗んで逃走、沼に身を投げる展開になる
 古谷版では里子の死体が未発見の時点で千恵子を呼び出し犯行に及ぶが、金田一に阻止され、沼に入水する
 古谷2時間版では石坂版に近いが、千恵子に告白後、金田一・磯川が土蔵に来るが特に抵抗も無く隙を突いて沼に身を投げる…ただし、此処で金田一が入水を食い止めている
 しかし、放庵を殺した『お庄屋殺し』の毒草を使い服毒死と云う結果で、やはり命を落としている
 稲垣版では映像化作品で唯一描写されている『ゆかり御殿』とその放火が有り、そのドサクサで千恵子殺害に及ぶが金田一に阻止され、放庵の家に逃走する
 ソコで追い詰めた金田一にまで刃を向け、橘・歌名雄までやって来てやっと罪を自白、源治郎の幻(幽霊? 稲垣版の金田一シリーズは結構幽霊描写が多いのが特徴である)を見て、ソレを追う形で沼に入水する
 JET版では里子の遺体発見後に千恵子を土蔵に呼び出し犯行に及ぶも歌名雄に阻止され、逃走、沼に入水する
 基本沼で死んでいるが、古谷2時間版のみ阻止されたが服毒していたと云う形で二重の自殺を企てていた事が特筆すべき所か
 また、映像作品・漫画版では千恵子を呼び出すのは、ほぼ全作共通だが、自白する積りだけの場合と千恵子の殺害を完遂しようとする場合とに分かれるのも比べて見ると面白い
(更に云えば、金田一にまで凶行に及んだのは稲垣版だけである)

 さて、母親が一連の殺人犯として自殺、妹もその被害者として死亡、父親は実は昭和7年に死んだ詐欺師である事が判明し、更に云い寄ってくれた女性達は皆被害者として死んでいる…と云う正に踏んだり蹴ったりの歌名雄だが、原作では『歌が上手い』と云う設定を持っており、一人上京する道を選ぶ
(千恵子のマネージャーが芸能人として育てる思惑も若干有る様だ)
 コレに伴い、亀の湯は別の親戚筋に譲る事が語られている
 石坂版では磯川が引き取り、岡山の農場専門学校に進学させることにした、と金田一に告げている
 亀の湯の今後は全く描かれていない
 古谷版では事件が完全に決着した後、金田一・磯川から真相を聞き、日和に引き取られる事になる
 亀の湯は特に語られないが、常勤の女中さんも郷に帰る旨云っているシーンが有り、歌名雄もどこか工場で働くと説明が有り、継ぐ気は無い様である
 古谷2時間版ではリカの49日後に1人で東京に出る、と金田一・千恵子に語る…やはり亀の湯の今後は語られていない
 稲垣版では千恵子のマネージャーは出てこないが、千恵子の母が育てると東京に引き取られる
 JET版では岡山の農大に進学するが、磯川他誰かが引き取ると云う描写は無い
 原作では1人或いは東京で千恵子のマネージャーに付いて芸能人生活…となる可能性が示唆されるが、石坂版の『磯川が預かる』と云う結末が印象的だったのか、古谷版・稲垣版と磯川ではないモノの、その位置に居る警察(警部等)が個人的に引き取る結末はソレナリに多い
 古谷一行主演の連ドラ版横溝正史シリーズではこの作品が最後の作品(翌年、第2シリーズが製作されるが)で、日和とのコンビが此処で一段落付く為、こう云う展開も可能と判断されたのだと思われる
 稲垣版でも結局シリーズ最終作となった作品で、以降は稲垣金田一と橘が組んで事件に当たる作品は作られていない

 最後の項目に入る前に特筆すべき事を各作品毎に少々記す
 石坂版では『おりん』が『おはん』に名を変えている…当時、同じ東宝系の映画で『おりん』と云う主役が活躍する映画が配給された事に考慮した事らしい
 また、放庵は恩田事件の直後、放心状態のリカを手篭めにし、以降も生活費を強請っている解釈がされている
(原作では、放庵は色好みで少々独特の倫理観が有る描写だが、特に強請りや強姦等はする性格ではない、とされている)
 また、原作では『グラマー歌手』として有名になった『大空ゆかり』について、特に歌手とは云っておらず、更に芸名も使わずに『別所千恵』で有名になっている
(原作では別所千恵子…何故『子』を抜いたかは不明)
 古谷版では捜査主任が済し崩しに日和となっており、原作に登場する立花警部補は登場しない
 古谷2時間版では石坂版に準拠して恩田事件直後、放心のリカを放庵が手篭めにし、その後も生活費を強請っている描写がある
 また、ゆかりはグラマー歌手であり、帰郷の際に里子に対して最新レコードを土産にしている(他の泰子・文子には特に渡していない事で、村に居た時期に一番親しかったのが里子だった事が暗示されている)
 稲垣版ではリカは放庵に手篭めにはされていないが、恩田事件をネタに生活費を強請られている描写はあった
 また、パートナーの警察が署長と云う立場であり、捜査主任を兼ねる展開になっている(ってか、何処署の署長だったのか…シリーズ5作で常に一緒なんだがwww)
 JET版では泰子の生前最後の目撃者は千恵子となっている
(原作その他全てで、その位置には里子が入っている)

 最後になるが、金田一と磯川が別れるシーンである
 事件が全て解決し、金田一も磯川も全て事件から解放される(原作では捜査主任は放庵の捜索時から村に来た立花であり、磯川は御意見番的な位置に居たので、開放が早かった)と、傷心旅行に出るのだ
 磯川がリカを愛していた(勿論片恋な訳だが)事を見抜いていた金田一の計らいなのだが、大阪で二人は別れる事になる
 その際、金田一は磯川に『リカを愛していたんですね』と告げられ、吃驚した隙に列車が出発、返答を得ないまま別れる所で小説が終る
 石坂版では総社駅(岡山の街)で別れる事になるが、磯川は事件の後処理を手伝う事になっているらしい
 そこで同じく『リカを愛していた』事を見抜かれるが、列車の駆動音でソレが磯川の耳に入ったかどうかも不明であり、やはり回答を得ずに列車が出る…ただ、上記の通り別れたのが総社駅、駅のプレートには『そうじゃ』が平仮名で書かれているのが画面ほぼ中央に大きく映し出される
 磯川の答えを画面に表示する暗示的なラストである
 古谷版ではリカの墓前で別れており、その場で『リカが好きだった』事を見抜かれるが、日和は無言の肯定に近い形で返答している
 古谷2時間版でもリカの墓前で別れるが、この作品だけ『リカを愛していた』旨の台詞が全く無い…と、云うのも里子の遺体発見後、解決前に磯川自身がリカに告白めいた事をしているのだ…当然、成功してはいないのだが
 稲垣版では村境で橘と別れ、人力車で村を出るのだが、その際に耳元でハッキリと『リカを愛していた』旨の見抜きを告げられている…橘が驚いている隙に人力車を出させて回答は聞いていないが
 JET版では石坂版に準拠しており、総社駅で別れ、『リカを愛していた』の問答は列車駆動音で磯川に届いていない風な描写であった
 原作でも印象的なラストシーンな訳だが、石坂版の『そうじゃ』と云う駅名(実際にある地名だし、原作でも確か乗り換えの要所になる大きな駅として登場する)を旨く使った映像美であるラストを作って仕舞ったので、他の作品にも少なからず影響を与えていると思う
 また、上記歌名雄の一件でも書いた通り、古谷版(連ドラ)と稲垣版では日和・橘と組む最後の事件なので、こう云う位置設定が可能だったのだと思われる

 以上、各作品を見ながらメモってただけで8.5KB近いメモになっていたので、ある意味覚悟していたが、文章にしたら30KB超えてるとか、どぉよwww
 取り敢えず2回に分けたが、読んでくれる人が居れば有り難い話である

 さて、次回は…何書くかな
 ミケのレポートも書けてないし、その辺思い出しながら書くか、他のネタが有ればナニか別の記事になるかもしれない
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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