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2016年5月17日 (火)

獄門島 読破(ネタバレ多数)

 と、云う訳で最近、乱読している横溝正史の金田一モノだが、獄門島を読破した
 大昔、小学生の時分に図書クラブ(課内クラブ)に所属しており、その時に一度読んだが、小学生用のハードカバーだったので、多分有る程度年少用にスポイルされたモノだったのだと思う
 故に、有る意味初見に近い積りで読んだ
 話の内容は概略として映像化作品を複数見ているので、ある程度把握しているが、今回もまた違い等を列挙してみたい

 さて、この作品、現時点で映画2本とTVドラマ4本の計6作の映像化作品がある
 取り敢えずリストアップすると(wiki情報)

劇場映画
 1949年(金田一は片岡千恵蔵:前後編仕様)
 1977年(金田一は石坂浩二)

TVドラマ
 1977年(金田一は古谷一行:1時間枠 全4回)
 1990年(金田一は片岡鶴太郎:2時間半枠)
 1997年(金田一は古谷一行:2時間枠)
 2003年(金田一は上川隆也:2時間枠)

 この内、私が見ているのは石坂版映画と古谷版(両方)、鶴太郎版の4本で、映像化作品では無いが、JET著の漫画版も所持している
 以降は原作・石坂版・古谷版・古谷2時間版・鶴太郎版・JET版を比較して書いて行きたい

 先ず時代背景だが、コレは殆ど変わらない
 まぁ最後のオチが復員詐欺(戦死した戦友の実家に『生きている』と知らせると御馳走も礼も奮発するので、ソレを当て込んで詐欺を行う事。広報等政府通達で戦死が判明すると出来ない詐欺だから、戦後直ぐでないと不可能)なので、昭和21年で固定され、季節も見立ての『季違い』が鍵になるので夏~初秋で固定する…筈なんだが
 『季違い』を『気違い』に聞き違えるミスリードが放送自粛用語に引っかかる関係で、飛ばされたり改編されたりと本来のキモの筈なのに映像化の時点で結構不遇である
 実際、殆どが夏又は8月等、夏を示しているが、古谷2時間版では季節の名言をせず、金田一は終始マントを着込んでいるので、秋~冬なのかも知れない

 場所は瀬戸内、岡山県側の孤島なので、登場警察は岡山県警となり、原作では磯川警部とペアを組む事になる
 石坂版では等々力警部(原作では等々力警部は警視庁の警部で、シリーズ中盤以降になる東京モノでコンビを組む、病院坂等は等々力警部が活躍する…病院坂の下巻では定年退職をして、この人も私立探偵になるんだが)である
 古谷版・鶴太郎版・JET版でも原作と同じ磯川警部だが、古谷2時間版ではシリーズ後半レギュラーだった河合警部(オリジナルキャラ)になる
 まぁ尤も、原作では磯川警部と等々力警部のキャラクターは書き分けられているが、映像化作品では金田一が推理するのに必要な証拠・情報提供と云う役割と、空回りする公的捜査の象徴としての警察(捜査主任)が必要なの出ているに過ぎず、役名は何でも、やってる事は殆ど変わらない事が多い
 石坂版についてのみ、シリーズを通して『担当警察官は金田一を知らない』と云う設定で始まるので、警察は一貫して非協力的だが、一緒に捜査して行くに従い打ち解ける展開になる

 本来、金田一が世間に出る2作目の事件(1作目は本陣殺人事件)で、一緒に捜査した磯川警部は本作では既知と云う話であり、古谷版・鶴太郎版・JET版でも磯川警部と既知と云う設定で話が続く
 当然、古谷2時間版での河合警部もシリーズレギュラーなので、金田一とは既知である
 また、警察関係では島の駐在である清水巡査が金田一をある程度信用しながらも行動が妙だ、と云う事で最初の花子殺害事件後に1晩留置所に入れる(その間に雪枝殺害が起こる)のだが、原作ではただ『金田一が怪しい』だけでなく、磯川警部も遠因の一つとなっている
 と、云うのも、やはり話の途中で一つの核となる部分に海賊行為をしていた復員兵が島に1人潜伏する一節が有る(復員すると思われていた一と勘違いする等、物語にも絡んでくる)のだが、ソレの捜索で清水巡査は花子殺人の前に磯川警部と顔を合わせるのだ
 その際、磯川警部が思わせぶりな(友人とは云わずに『知っている、大物だ、大事件が起きるかも』の様な)事を吹き込んだ所で、殺人事件が起きたモノだから…と云う背景も有った
 コレが映像化されたモノは私の見た4作には無かった
 また、古谷2時間版では清水巡査が本庁栄転を狙う野心家で、勇み足で金田一を拘留、河合警部に怒られる…と云う展開も有った
 また、この時は河合警部の登場が非常に早く、拘留直後に河合警部が誤解を解いて釈放したので、雪枝殺害時に金田一はフリーになっていたのだ…が、雪枝が行方不明と云う夜には本鬼頭で留守居をさせられており、結局、犯行を防げない…と云う展開になっている
(他の映像作品・漫画では基本的に『事件慣れしており、清水巡査よりも早く証拠品の発見等をしている等、素人とは思えない言動』と『全てが身内に近いこの島で殆ど唯一の部外者』と云う立場から拘留に至った、とされている)

 場所及びソレに伴う警察関係は以上かな
 次に金田一の来島動機だが、鬼頭千万太の遺言と云う基本線は変わらない
 原作・古谷版・鶴太郎版・JET版の4作が戦友である千万太を看取っており、その際の遺言で『自分が死んだら3人の妹が殺される、ソレを防いでくれ』と託されている
 鶴太郎版でだけ、千万太は戦地で病死となっており、原作を含め他の3作では、戦争では生き残り、復員船の中で病死となっている
 更に、鶴太郎版では『祖父が』3姉妹を殺すと明言しており、来島当時、嘉右衛門が戦時中に病死している事を知った金田一が、事件は起こらずに済むと安心する場面があった
 石坂版では『千万太を看取ったのが金田一の友人であり、遺言を託されたのもその友人。ただ、その友人も病気で来れなくなったので名代として金田一が来た』と云う展開になっている…故に、この作品では金田一は千万太の顔を知らないで島に来ている
 更に古谷2時間版でも金田一が千万太を看取ったのは事実だが、厳密には戦友ではなく、金田一の依頼人と千万太が同じ病院に入院をしており、見舞いを重ねる内に知り合いとなり、依頼を受けるに至った事になっている
 その関係で、職業が探偵である事は速攻でバレている
(来島動機になる遺言云々は伏せているが)
 更に、古谷2時間版では、千万太の遺骨を持参しており、本鬼頭の家に入る際『鬼頭千万太君の御帰還です』と口上を入れて家に入っている
 原作・古谷版・鶴太郎版・JET版は千万太の金田一紹介文(和尚・村長:荒木・村の漢方医:幸庵の連名宛て、静養したいとの要望に沿って島を紹介した、と記載)を持って来島しており、本来の目的を隠している
 石坂版では上記の通り、千万太と金田一に面識は無いのでの絶筆と云う形で『故郷を目前に死ぬのは嫌だ。島でやらねばならない事が有る』と書いた手紙を友人経由で受け取っており、千万太の関係者だと身を立てている
 古谷2時間版では、遺品として千万太の腕時計を持参しており、手紙等は持っていない

 人間関係も大局では大きな違いは無いが、結構詳細では違いが出ている
 本鬼頭に千万太と一(古谷2時間版では肇)、被害者になる月代・雪枝・花子の姉妹と一の妹の早苗、住み込み女中に勝野、千万太の父親の与三松、大戦中に死亡した嘉右衛門は大抵揃っている
 与三松は気を違えている設定が放送自粛に引っかかるのか、古谷2時間版ではお小夜を追い出された反動でヒロポンに手を出して中毒になっている設定で、鶴太郎版ではソモソモ登場していない
(千万太の父親なのだが、殆ど説明無しで画面登場も無かった気がする…了念和尚の口頭説明だけで飛ばされた気がする)
 勝野については、石坂版では大きく扱われている(後述)が、古谷2時間版では登場していない
 分鬼頭では儀兵衛、お志保(石坂版では巴)、鵜飼章三が基本的に揃っているが、儀兵衛は既に死んでいる(古谷2時間版)と云うケースがあった
 村の顔役である了念和尚、村長の荒木、漢方医の幸庵(古谷版では鍼医師)も全員全作品に登場している
 了念亡き後、寺を引き継ぐ典座(食事等雑務を担当する修行僧)である了沢も全作品に登場している
 更に、古谷2時間版では、嘉右衛門・肇と早苗の父・儀兵衛は3人兄弟となっており、分鬼頭は分家と云うより、兄弟喧嘩での分裂となり、肇は嘉右衛門の甥(早苗は後述)と云う設定で話が始まった
 同じく古谷2時間版では、月代が島を牛耳る事を意識しており、現段階で実質本鬼頭を取り仕切っている早苗に敵愾心が有る描写がある

 最後に被害者3姉妹の母親であるお小夜だが、唯一古谷2時間版でのみ島を追い出されただけで生きており、嘉右衛門への恨みを金田一にブチ撒けている

 更に古谷版では与三松が気を違えて座敷牢に…と云う展開は無い
 原作を含み殆どの作品で、座敷牢、一つ家、お小夜の発狂・死亡、与三松の発狂の関係は以下の通りになる
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →お小夜、出産を期に本鬼頭に入る
 →お小夜、聖天を名乗り加持祈祷を始める(与三松が一つ家を作る)
 →お小夜、在る程度信者を集めて新興宗教になり、寺を攻撃する
 →了念和尚の怒りに触れ、網元・寺を敵に回す事で旗色が悪くなる
 →お小夜、発狂(信者を折檻して半殺し→信者離れ)
 →嘉右衛門、座敷牢を作り、お小夜を隔離
 →お小夜狂死の後、与三松発狂、座敷牢に

 古谷版ではこうなる
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →嘉右衛門、お小夜の本鬼頭入りを認めず、与三松を摂関
 →与三松、摂関の後遺症で精神障害
 →お小夜、与三松の治癒を祈り加持祈祷を始める(一つ家が出来る…誰が作ったんだ?)
 →お小夜、了念・村長・幸庵に与三松の精神状態の発端と攻め立てられ入水自殺
 →お小夜の自殺を知って、与三松の精神状況悪化、隔離(特に座敷牢にはなってない)
 …ナンか、お小夜さん余所者ってだけで迫害受けてるだけの良い人ぢゃん

 また、古谷2時間版では上記の通り与三松はヒロポン中毒と云う事になっているが、その辺も展開を書くと
 与三松、お小夜を見初めて身篭らせる
 →与三松、お小夜と別棟(コレは与三松が建てたか)で生活
 →嘉右衛門、与三松・お小夜の家に殴りこみ
 →お小夜、一つ家を建てて嘉右衛門を呪う祈祷
 →嘉右衛門、お小夜に毒を盛り殺人未遂
 →お小夜、単身島を逃げ延びて神戸で暮らす
 →与三松、ヒロポンに走り、中毒に
 此処までお小夜が嫌われた理由が『単に余所者だから』なのだから困ったモノで、まぁ昭和初期~中期辺りまでの島国根性が抜けない時代、と云う事で目を瞑るしかないだろう

 石坂版ではお小夜の発狂が確認され、座敷牢に閉じ込められる前に嘉右衛門に手篭めにされる描写も有った
(その時、与三松はまだ正気だった筈だが、どうしてこうなったwww)

 コレらに関連するが、原作を含めて殆どの作品で与三松は気を狂わせている設定となっており、基本的に怒鳴り声と唸り声位しかない
 しかし、古谷版では発作的に怒鳴る・唸るは在るのだが、意識はハッキリして台詞も有る…ただ、娘の死亡を聞かされても『清い体のまま母の所へ行った、私も早く行きたい』と少々常軌を逸した思考回路をしている設定である

 殺人トリックも、基本的に全て同じで原作に準拠しているが詳細に違いが出ている
 石坂版は以下の変更が有った
・花子については撲殺している(原作を含め、他は殴って昏倒させた所で絞殺している)
・雪枝殺害自体は原作準拠だが、梃子の原理で鐘を持ち上げた際、強風により棒が外れて鐘が落ち、雪枝の首が切断されて海に落ちる描写があった
・犯人を変えた(後述)関係で、月代の殺害に『片手で手拭を使って絞め殺す』と云う難しい事をする為のトリックが省略されている
 古谷版は幸庵が雪枝を、村長が月代を殺害している(この2組について犯人を入れ替えている)ので、幸庵の腕の負傷(雪枝殺害の後に負傷している)は月代殺害と何の関係もなくなっている
 古谷2時間版でも数点違いが有るので箇条書きにする
・花子殺害の為に呼び出した手紙は了念が書いており、筆跡から犯人が判る展開になった
・古谷版と同じく幸庵が雪枝を、村長が月代を殺害しており、幸庵の腕も負傷する描写が無い
・雪枝遺体発見の釣鐘は『天狗の鼻』と呼ばれる崖っぷちではなく、洞窟っぽい通路上であった事で、釣鐘が歩く(擬装用の演劇で使う釣鐘を見間違う)辺りの描写が無い
・俳句の見立てである事を月代殺害の前に金田一が気付き、月代の警備を厳重にと依頼して有ったが、警察のドジで殺害される(金田一はお小夜に会いに神戸に出ていた)と云う展開になっている
 鶴太郎版では花子殺害の呼び出した手紙の渡し方が桂の木ではなく、水神様の祠に変更されていた事、和尚が雪・月の呼び出しには金田一の名を騙った旨告白している事等が変更されている
 最後にJET版は完全に原作に準拠し、幸庵は雪枝殺害の時期に復員兵と立ち回り、左手骨折を負い、月夜殺害にはトリックを使った

 犯人も石坂版を除いて原作に準拠している
 コレは映画公開が同年のTVドラマ版(古谷版)と重なった為に原作者了解の下に脚本を変更、雪・月の実行犯を勝野に変更したのだ
(また、この事に伴い、横溝・市川・石坂コンビでの映画5本全てで『女性が殺人を犯す』と云う定説が出来る事になる)
 この動機を作る為、勝野は本鬼頭で住み込み女中をした際に嘉右衛門に手篭めにされ、一と早苗を産んだ(つまり、早くして亡くなったと云うこの兄妹の両親というのは、誤魔化す為の偽装)と云う設定を新たに加えた

 次に、この作品を語る上で外せないのが推理の鍵になる了念和尚の呟き『きちがいじゃが仕方あるまい』であるが、この辺りを比較する
 コレは見立て殺人の元になる俳句は鶯を歌った春の句であるのに、事件の舞台は夏~秋にかけてである事を嘆いた呟きだったのだが、コレを気を違えている与三松の事と金田一が勘違いする一節である
 『気違い』が放送自粛の対象になった所為で、放送倫理と関係ない劇場映画である石坂版・漫画作品であるJET版では普通に使われているが、古谷版では『きが変わっているが仕方がない』と云い回しを変えている
 古谷2時間版ではソモソモこの辺りは省略され、鶴太郎版では樹が違っている(鶯の歌だが、吊るされたのは梅の木ではなく銀杏の木)と台詞は使うモノの、ミスリードする先を変えて使っている
 ちなみに原作だが、花子殺害現場で金田一が『聞いたと主観した台詞』は『気ちがいじゃが仕方がない』だが、最後の推理説明の際に金田一が『そう聞こえたと思ったんですが、実際には「季が違っているが仕方がない」と言っていた』と語っている

 犯行動機も基本的には殆どが原作に準拠しているが詳細に変更が有る
 古谷版では、お小夜憎しが先に立っていたのか、一の生死は関係無く千万太が死亡していれば犯行を実行する積りだった…と説明されている
 つまり、復員詐欺が有ろうと無かろうと、金田一が千万太の訃報を届けた時点で犯行動機は成立して仕舞った訳だ
(まぁ金田一が知らせずとも広報で知らされたとは思うが)
 石坂版の勝野については、和尚にこれ以上手を汚して欲しくない、併せて云えば自分の腹を切って産んだ子を本鬼頭の頭領にしたいと思って、と云う心理であった旨説明されている
 古谷2時間版だけ大きく変わっており、千万太・肇が両方死んだ場合に3姉妹を殺せ、と云う条件になっていた…この場合、復員詐欺で肇が生還と思われていたので動機が成立しなくなる訳だが、肇の戦死通知が実家である本鬼頭に届かず、寺に届いていた(つまり、物語最初から、早苗は復員詐欺に引っかかっていたが、和尚たち犯人3人は肇の死を知っていた)事が逆に嘉右衛門の執念を感じた、としている
 更に、早苗が嘉右衛門の実の娘(肇の母を嘉右衛門が強姦し、産ませた子)である設定が付け加えられ、コレも動機の一つとなっていた事が物語の最後で暴露された

 また、千万太が死ぬと姉妹が殺される、と云う事を千万太自身が知っていた事について、原作では千万太と一の出征前に嘉右衛門から直接話された、と云う事になっており、コレに準拠したのは鶴太郎版である
 古谷版・古谷2時間版・JET版ではその経緯については省略されており、石坂版では勝野が千万太に手紙で知らせた事になっている

 実行犯である村長・幸庵の両名は、原作では犯行を行う気は基本的に無く、了念和尚が実際に『始めてしまったから』犯行を起こした、と云う心理だった
 石坂版でも村長・幸庵は真相を知っていながら故意に隠していた訳だが、コレに付いても消極的な協力、と云う位置付けで説明されている
 古谷版では、了念・村長・幸庵の3名とも嘉右衛門に心酔しており、積極的に犯行をしている感じであった
 他の古谷2時間版・鶴太郎版・JET版では特にソコまで描写されていない

 では、実行犯の主犯格である了念だが、コレも原作では基本的に犯行を実際に行うつもりは無かった旨、告白している
 ただ、千万太の死が一の生還(復員詐欺)の翌日に知らされ、更に雪枝殺害の見立てに必要な釣鐘が返還される(戦争の鉄不足で徴収されていた)と知らせがほぼ同日に来た事で、嘉右衛門の執念を感じて実行に移した、とされている
 映像化作品でも基本的にこの辺は変わっていない

 更に、推理の手がかりになる枕屏風(犯行の見立て元になる句三首の短冊が貼られている)を金田一の寝室に置いた事について、原作ではある種のスポーツマンシップだったとしており、金田一の素性(難事件解決歴の有る探偵)を事前に知っていた和尚が在る意味『途中で気付いて止めてくれる事を祈って』置いた(明言はしていないが、行間的にそう読める)としている
 古谷版では、コレを了念和尚から金田一宛の挑戦と推理し、了念も特に否定はしなかった
 鶴太郎版では、より攻撃的に『千万太の遺言で殺人を阻止しようとした金田一は失敗し、嘉右衛門の遺言で殺人を決行した犯人側は遺言を実行出来た、犯人側の勝利である』と金田一相手に勝ちを名乗り大笑いしている
 その後、一の訃報が舞い込んで『しないでも良い殺人をした貴方も負けだ』と金田一に返されるが、その時は既に犯行を全て終えて満足した和尚は腹を切っており、事切れていた…と云う展開である
 ちなみに他の映像化・漫画作品ではその事に触れていない

 事件解決後の犯人達であるが、原作では一の訃報を聞いて幸庵は発狂の上自殺、村長は島外逃亡、和尚は憤死となっている
 JET版では幸庵が発狂、村長が自殺、和尚が憤死である
 石坂版では和尚・勝野が二人で崖から身を投げている
(村長・幸庵は犯人隠匿等の関係で警察に逮捕される)
 古谷版では、了念は念仏を唱えながら死亡(多分、事前に服毒していたと思われるが、その具体的な描写が無い)、村長が一つ家(月代殺害の現場)で首を釣り、幸庵は天狗の鼻(雪枝殺害現場の崖)から身を投げている
 また、犯人とは関係ないが、寺で了念・磯川を前に謎解きをしている最中、外で分鬼頭のお志保が聞いていると云う独自展開があった
 古谷2時間版では3人とも素直に逮捕されており、特に誰も自殺や発狂等の描写は無い
 鶴太郎版では了念和尚だけ、『やることはヤった』と陰腹を切って自殺、他の2人については詳しい描写は無かった

 最後に事件解決後の舞台だが、原作では用の無くなった金田一は東京に帰るのだが、その際に早苗を誘っている
(金田一シリーズ数少ない(本作と『女怪』のみ)の金田一耕助の恋愛沙汰である)
 石坂版では特にその様な展開は無く、古谷版では真相を知って自殺を図る早苗に対して今後の本鬼頭の未来を説いて島に止まるよう勧めると云う原作と真逆の展開になっている
 古谷2時間版では、早苗から晩酌に誘い誘惑っぽいことをするシーンも有ったが、結局は事件後早苗は島に残る選択をする
 鶴太郎版ではヒロインの座は何故か月代に移っており(鶴太郎の金田一シリーズは、牧瀬里穂が全て違う役で登場し、ある意味プロモーションされていた。この時も月代の配役が牧瀬だった事が金田一との恋愛沙汰になったと思われる)、早苗は最後に島外に誘われる描写は有るが、余り恋愛感情的な感じは受けない
(当然、早苗は島に止まる事を選ぶ)

 最後に金田一と復員詐欺の来島時期のズレだが、鶴太郎版では 金田一と復員詐欺が同じ船で来島してる描写が有る
 原作・古谷版・JET版では完全に入れ違っており、復員詐欺が島外に出てから金田一が到着している
 石坂版では復員詐欺が笠岡に到着した時に金田一が笠岡に到着し、獄門島への連絡船が着く埠頭を聞いているし、古谷2時間版では復員詐欺が本鬼頭を出る時にすれ違っている

 取り敢えず…っても結構長くなったな、以上で読破・視聴した比較検討の結果である
 現段階では悪魔の手毬唄を読んでいるが、コレの映像化作品は映画2本、TVドラマ5本(内、視聴済が映画1本、TVドラマ2本,追加で3ヶ月後位に今回買ってるシリーズで古谷2時間版が付録される予定)である…JET版漫画もあった筈だが未入手、と云う事で比較材料がかなり少ない
 それよりも、悪霊島が映画1本、TVドラマ2本で、先日のDVDコレクションで古谷版を入手したので全作確認した事になっている
 場合によっては、手毬唄の後に悪霊島の原作を読んで記事にするかも知れない

 次回更新は…短く纏めたいなwww
 ナニを書くかは、まだ決めてない
 ソレまで皆様、御多幸を^^

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コメント

どもです。

私は原作と石坂浩二の映画しか見てなくて、確かJETのコミカライズもどこかで読んだかな。でも片岡千恵蔵版とか、古谷版は2作もあったんですか。知らなかった。
この話は割とまとまりがいいというか、横溝正史らしい舞台とか探偵小説らしいトリックとか、(私が読んだ中では)珍しく金田一が「犯人はあなただ」とかやるし一番好きだった作品です。
あと映画では石坂浩二がターザンよろしく犯人を追って森の中を蔓につかまって跳ぶシーンがあったりと、当時は石坂浩二も若かったんだなとか思っちゃいます。でも犯人を変えちゃうのはどうかなあ。
JET版はほんとに原作準拠でしたね。まあそれも良かったですが。

蛇足ですがこの事件後の金田一は岡山まで戻ったところで、本陣事件を小説化している作家(もちろん横溝正史本人の事)が岡山に疎開してきてまだいるというので会いに行き、意気投合して獄門等の事も語ったのでこれも小説化されたと、「黒猫亭事件」の冒頭に書いてあった覚えがあります。

でわでわ。

投稿: あひる | 2016年5月31日 (火) 20時35分

Shot>あひる提督
 毎度、コメント感謝します

 私は映像化した金田一=古谷一行のイメージが先行するタイプなので、古谷版が有るのは前々から知ってました
 ただ、ビデオも然して広まってなかった'77年当時とか、TV放送1回の古谷版はやはり印象に薄かったです
 逆に映画版の方が○○ロードショーとかTVでの放映がソレナリに有った関係で見る回数は多かったと思います
 DVDのメディア化も、以前記事にした通り、今回の隔週刊のテーママガジン(DVD付き)が出るまで、2~3社で分けてリリースしてた所為でナニを買えば良いのか混乱して買えず、結局『金田一耕助の事件匣』と云うDVD-BOXと犬神家(コレだけ、リリースが角川春樹事務所だったので、同梱出来なかったのでしょう)を買えば全部揃う石坂版の方が簡単に手に入り、見る機会も増えた事も原因に有ると思います
 ソレ以前の金田一は私も結局1作も見れてません

 そうですね、横溝正史の醍醐味って小説はまだ数作しか読めてない私が云うのもナンですが、幾つかの要因をピックすると『鍾乳洞(洞窟)』『孤島』『寒村』『顔の無い死体』辺りは頻繁に出てくるワードだと思います
 で、犯人を目の前にして『貴方が犯人です』と云うのも確かに映像化作品だと結構有りますが小説では少ないですね…磯川さん、等々力さんに説明はしますが、犯人は既に自害後だったりしますし…手毬唄もそうでしたし、チト変則ですが病院坂もそうだったと思います
 犬神家も今度読んで置きたいと思いますが、映像化して私が見てる作品では『貴方が犯人です』は有った様に思いますが…
(『貴方が犯人です』と書いててTYPE MOONの出世作『月姫』の体験版から派生した『あなたを、犯人です』をフと思い出して仕舞いましたがwww…閑話休題)

 石坂浩二のターザンよろしくツタで飛んだシーンですが、確かにアクション性は強かったし、基本、事件→推理→解決の動きの少ない映画ですから映画館で目を引いたと思いますが、何度も見てると『アレ、必要だったかな?』とか思える時も有りますがwww

 犯人を変えた事については、本文で少し触れましたが、劇場版が古谷版(TV全4回版)の最終回:解決編放映の1週間後に封切り(古谷版最終回が'77/8/20放映,石坂版映画が同27日封切り)と見事に重なったので、苦肉の策だった…と云う事と『横溝×市川×石坂シリーズは女性が犯人』と云う鉄則を作りたかったのと、両方の意味で横溝氏の了解を取り付けて作ったって事らしいです
 まぁ後者の理屈は市川監督の自己満足…と、切って捨てる事も可能ですが前者の理由は…一気に金田一ブームが来て仕舞った関係で避けられなかったのでしょう

 あぁ原作小説に度々登場する『Y先生』ですね、病院坂でも数回出ておられて(その時は引越し後で『成城の先生』とも呼ばれてますが)ますが…黒猫亭事件はJET氏の漫画と映像化(古谷版で全2回)しか見てませんね…今後、短編とかも読む事になるのかなぁ…

 では、また^^
(ってか、次の漫画版手毬唄で御返事書きますがwww)

投稿: 毘沙門天松茸 | 2016年6月 1日 (水) 12時04分

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